日本柔道の論点

新書の小径

2013/06/27 15:45

 グウの音も出ないとはこのことか。女子強化選手の暴力告発問題の時も、この人が出てきて「指導者の、指導という名の暴力」について理路整然と語り、「告発選手が匿名であることへのイチャモン」には静かに、しかしきびしく反論をしてみせた。その時に「この人はスゲエ」と思い、そういえばこの人の柔道解説は「声よし」「内容わかりやすい」「おまけにエキサイティング」で感心させられたのを思い出した。
 柔道といっても『柔道一直線』以後の知識を得ていない状況だったが、これを読んで、現在の日本柔道界がどうなっているのかを知った。「独裁政権下の国際柔道連盟」などという章があり、これは文字通り国際柔道連盟が「会長の独裁による団体になっている」という話だ。この連盟会長(オーストリア人)がヤリ手の改革派なのはいいとして、規約をどんどん変えていき、会長のやりたい放題できるようなことになっちゃっている。この体制に日本の連盟も賛成票を投じてるがいいのか、と問うている。
 これは驚いた。日本は「柔道の本家本元」として威張っていると思っていた。そして、その独裁連盟が主導するルール改定が「ことごとく柔道をつまらなくしている」ことをズバズバと指摘する。「王者クラスになると、試合すればするほど相手に手の内がバレるから勝ちづらくなる」とはびっくり。そういや昔、ヤワラちゃんが国内の試合にあんまり出ないのは国際試合以外を軽視してると言われてたことあったなあ。どうもそうではなかったらしい。
 もちろん「体罰問題」も論じる。いまだに「愛があれば」的な、結果的に体罰を肯定する論議を見かけるけれど、体罰による指導は、体罰の連鎖を生む以上に、まずその体罰を受けた人間が能力の向上を望めなくなるとキッチリ切り捨てる。指導者は英語しゃべれるようにしろ、英語わかんなくてもコミュニケーション能力高めろ、ってのも納得いきすぎる。山口香はスゲエや。

週刊朝日 2013年7月5日号

日本柔道の論点

山口香著

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日本柔道の論点

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