書評『マリリン・モンロー 魂のかけら』スタンリー・バックサル、ベルナール・コマーン編/井上篤夫訳 |AERA dot. (アエラドット)

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《話題の新刊 (週刊朝日)》

マリリン・モンロー 魂のかけら スタンリー・バックサル、ベルナール・コマーン編/井上篤夫訳

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トミヤマユキコ#話題の新刊

マリリン・モンロー 魂のかけら

スタンリー・バックサル、ベルナール・コマーン編/井上篤夫訳

978-4861523656
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 「20世紀を代表するセックスシンボル」であり「おバカな金髪娘」……マリリン・モンローという名の辞書には「知性」の2文字が存在しないかのようだ。「セクシー=おバカ」。このあまりにもわかりやすいイメージ戦略によって、ノーマ・ジーンという女性は、女優マリリン・モンローとして大成功をおさめ、そして死んでいったのである。
 しかしながら、彼女が遺した大量の自筆資料がそのまま収録された本書を読んでゆくと「おバカ」イメージは遠くの後景へと退いてしまう。ホテルのメモ用紙やノートに綴られる手書きの文字は、どこか神経質。書いては消され、順番が入れ替えられ、つねに逡巡を繰り返しながら、完成に向かってゆく様子は生真面目そのものである。そして、たった一行「having a sense of myself」(自分がマリリンだって感覚を持つこと)と書かれたページからは、マリリンであることと引き換えに抱え込んだ、言いようのない孤独と不安が匂い立つ。ここには、間違いなくわたしたちのまだ知らないマリリンがいる。

週刊朝日 2012年12月21日号


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