書評『さよならビートルズ』中山康樹著 |AERA dot. (アエラドット)

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《新書の小径 (週刊朝日)》

さよならビートルズ 中山康樹著

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青木るえか#新書の小径

さよならビートルズ

中山康樹

978-4575153958
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リヴァプール・ビートルズって?

 日本洋楽史。へんな言い方だけど、そうとしか言いようがない。第二次大戦後に、米軍とともにアメリカ音楽を流すラジオもやってきて、エルビスでびっくりさせられ、ビートルズでポカーンとしてしまった。当時の日本の状況を一口で言うとこうなるが、この本はビートルズ人気が爆発するまでに、いろいろあったエピソードを紹介していて、それが情けなくていい。
 ベンチャーズの初来日はメンバー二人だけでベースとドラムが日本人、おまけにベースはウッドベースとか。リヴァプール・ファイヴというグループが来たんだけど、日本側の要請でむりやりリヴァプール・ビートルズって名前にさせられたとか。でもその気の毒なリヴァプール・ビートルズの機材がすごくて、聞いたこともないすごい音を発したもんだから日本人のバンドマンがひっくりかえったとか。そりゃねえ、「ハァちょいとブギウギ」とやってた国にいきなりバンドサウンドが来たら目の玉むくし、大人は「とにかくこんなものは排除」ってなことになりますわな。
 タイトルは、ビートルズで日本の音楽シーンが大きく変化したが、それが今ほとんど「洋楽離れ」といえる状況にまでズルズルと進んでしまったことを嘆いて「さよなら」と告げているみたいだ。でも、今現在の音楽を聴いている若い人だって、それなりの苦労をして、喜んだりガッカリしているに違いない。だから、昔を知る人間が「音楽ちゅうんはなあ、こんなもんやない」と叱ったって理解はされんだろうなあ。そんなことはわかっていてもなお「ビートルズの衝撃」は、じじいの繰り言として死ぬまでつぶやき続けたい出来事だったのだろう。
 著者の中山さんの本は出るたびに買ってる。それは『吉祥寺JAZZ物語』って本の語り口が、あまりにも面白かったからだ。しかし、その本以外であの語り口には二度とお目にかかれず、これも違っていた。
 またあの面白い語り口で本を書いていただけないでしょうか。

週刊朝日 2012年9月21日号


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