セミナーなどの結果、志望転換をした学生の就職先は多岐にわたった。なかでも国際物流、商社、メーカーなど、英語でのコミュニケーション力を生かせる業界が多かったという。ほかにも地方公務員や、旅客関係で採用があったJR西日本、京阪電鉄などに就職した学生もいた。

「もともと就職に向けて航空業界研究や面接対策、英語学習などに熱心に取り組んできた学生のため、ポテンシャルは高かった。航空業界の採用中止決定は6、7月のことでしたが、短期間で成長し、成功したと思います。また、そもそも本学はCAの養成を目的としているわけではなく、航空業界は多様な進路の中の一つであると考えています。航空業界に関する授業を受けていれば、国際情勢に関する知識も得られますし、英語力も含めた総合的な人間力を生かす場として、国際的な企業も視野に入ります」(吉原さん)

 今年、就活をおこなっている学生はどうしているのだろうか。自身もANAでの勤務経験がある、キャリアセンター長の西田透さん(英語国際学部教授)は、学生の様子をこう見ている。

「昨年の学生は選考途中で採用が中断・中止され、道を断たれてしまいました。しかし今年の学生は、はじめからこの厳しい状況をわかっているため、別の業界に就職して人間力を高めようと方針転換をしています。行き場のない思いは抱えているかもしれませんが、昨年の学生よりは冷静に状況を見ることができているのではと感じます」

 キャリアセンターは今年も昨年と同様に、幅広い業界を学生に紹介していくという。

 前出の川本さんは、厳しいCA採用の現状に関連し、過去のこんな事例を教えてくれた。就職氷河期の2000年前後、ANAでは「募集なし」の年があった。JALも会社更生法適用を申請した10年と11年に、採用を中止していた。当時、新卒でCAをめざしていた学生のなかには、失意のうちに他業種に就職した人もいたという。しかしその後、既卒採用でCAになる夢をかなえた人もいた。こうした人たちのインタビューを「月刊エアステージ」で紹介したところ、読者から大きな反響があったという。

「今回のコロナ禍が初めてではなく、採用がストップした時代はありました。過去にも同じ思いをした人がいるんだな、自分だけじゃないんだなということを知って、少しでも気持ちの整理をつけてもらうことができれば、と思っています」(川本さん)

(文/白石圭)