私は美瑛在住の風景写真家に開花情報を教えてもらい、天気予報を吟味して「この日だ!」という一日に現場へ向かって撮影ができた。5月10日前後が狙い目だが、最近の気候変化は予想がつかないので、なんとも難しいところだ。

 春のかなやま湖周辺の鉄道風景はメジャーになりつつあるが、この桜の鉄道風景は知る人ぞ知る絶景なのだ。

金山ダム上の道路からエゾヤマザクラを見下ろす。バックにそびえ立つのは芦別岳(1726メートル)である。午前中が順光なので、桜の色と芦別岳の山容を狙うならば8時前に通過する下り始発列車がおすすめ。私的には夕方の半逆光に輝く桜と新緑の風景がイチオシ。ダムであるため送電線や鉄塔が多いので、フレーミングにはじっくり時間をかけたい。根室本線(金山-東鹿越)■キヤノンEOS 5Ds・EF70~200ミリ
金山ダム上の道路からエゾヤマザクラを見下ろす。バックにそびえ立つのは芦別岳(1726メートル)である。午前中が順光なので、桜の色と芦別岳の山容を狙うならば8時前に通過する下り始発列車がおすすめ。私的には夕方の半逆光に輝く桜と新緑の風景がイチオシ。ダムであるため送電線や鉄塔が多いので、フレーミングにはじっくり時間をかけたい。根室本線(金山-東鹿越)■キヤノンEOS 5Ds・EF70~200ミリ

水郡線【絶品の桜列車路線】

 茨城県の水戸市と福島県の郡山市を結ぶ水郡線。日本三大名瀑の袋田の滝や、つつじで有名な矢祭山公園が沿線にあるといえば、ピンとくる人も多いだろう。久慈川の渓流に沿って走る、のんびりとしたローカル線だ。

 春といえば桜と列車を撮りたいと思うのは当然なこと。効率よくさまざまなシチュエーションで桜と列車を撮影したいのであるならば、私は水郡線を一番におすすめする。

「花園のしだれ桜」や「戸津辺の桜」といった風景カメラマンには有名な桜があるのだが、そのすぐ近くを水郡線が走っており、一緒に撮影することが可能だ。

 また沿線にはソメイヨシノの桜並木も多く、全国の路線を巡った私の感覚としても、桜を絡めた鉄道写真がとても撮りやすい路線である。

 前述した矢祭山公園も桜の名所として有名で、もちろん水郡線と一緒に撮影することができる。矢祭山駅も桜に包まれる駅として有名だ。

 磐城棚倉駅近くにある「花園のしだれ桜」は、かんがい用水のため池の土手に植えられた一本桜で、水鏡に映る逆さ桜とともに撮るのが定番。早朝と夕方が水鏡になる確率が高いのだが、半逆光になる早朝がおすすめだ。

 透過光に輝く桜の花びらは美しく、堂々としたしだれ桜の存在感も強調できる。

 ただ、鉄道写真の厳しさは、水鏡になっているときに本数の少ない列車が走り抜けないといけないこと。撮影が決まったときの高揚感は、風景カメラマンよりはるかに高いものだと勝手に思うのは「鉄ちゃん」ゆえからか。

 磐城石井駅が最寄りの「戸津辺の桜」は樹齢600年以上のエドヒガンザクラ。桜のすきまに水郡線の線路が見える。日中列車を入れて撮影すると、桜の存在感に列車が完全に負けてしまい、鉄道感を全く出せない。そこで、ブルーモーメントの時間帯に、長時間露光で列車を光跡で表現して鉄道感を出すというアイデアを思いついた。

 ぜひ挑戦していただきたい。

「花園のしだれ桜」の狙い目は水鏡なので、まずは天気予報で晴れと同時に風が弱い日をリサーチする必要がある。水鏡はほんの弱い風であっという間に壊れ、回復までは時間がかかるので、多少イライラするのは仕方ない。あとは水鏡になっているときに列車が通過するのを祈るのみだ。午後が順光で桜の色味はしっかり出るが、やはり早朝のドラマチックなシーンを狙いたい。水郡線(磐城棚倉-磐城浅川)■キヤノンEOS 5D MarkIV・EF24~105ミリ
「花園のしだれ桜」の狙い目は水鏡なので、まずは天気予報で晴れと同時に風が弱い日をリサーチする必要がある。水鏡はほんの弱い風であっという間に壊れ、回復までは時間がかかるので、多少イライラするのは仕方ない。あとは水鏡になっているときに列車が通過するのを祈るのみだ。午後が順光で桜の色味はしっかり出るが、やはり早朝のドラマチックなシーンを狙いたい。水郡線(磐城棚倉-磐城浅川)■キヤノンEOS 5D MarkIV・EF24~105ミリ
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最後は「四万十川の春物語」予土線