「炭火焼肉ジュンチャン」の外観。看板は石田の直筆をかたどったという(撮影/國府田英之)
「炭火焼肉ジュンチャン」の外観。看板は石田の直筆をかたどったという(撮影/國府田英之)

 2020年4月、コロナの感染拡大が続く中で仕事で沖縄に行き、その後に感染が発覚した石田。その後も、緊急事態宣言下にもかかわらず「大人数で食事をした」などと報じられ、激しいバッシングにさらされた。今でこそ、会食によってコロナに感染しても非難される人はいなくなったが、当時は世間の空気があまりにギスギスしていた。

「反省すべき点は反省しています。仕事が減ったのも事実で、無一文と言っていい状況になりました」

 そんな石田の“出直し”を支えてくれたのは、プライベートで交流してきた飲食業界の関係者。いわば「素」の石田を知っている仲間たちだ。

「超のつく有名な焼き肉店の経営者や酒屋さん。親しくさせていただいている地方に住む方々が、簡単には手に入らない肉や野菜、お酒を仕入れることができるように手配してくださいました。自分の仕事が終わった後にわざわざ時間を割いてくれた方もいて、僕がお礼を伝えたら、『俺が死ぬときに、このことを思い出してくれればいいよ』って言って笑ってくれて。人のつながり、そのあたたかさに本当に助けられたと思っています」

 石田が口にするメニューへの「こだわり」とは、自分の舌が納得したというだけではなく、支えてくれた仲間たちの思いを受けての言葉なのだろう。

 だが、焼き肉店の経営については「知名度だけでは難しい」などと先行きを不安視する報道も早速出ている。

 その点は、石田の頭にもある。

「なめていたら、すぐに廃業になってしまいますよね」

 ただ、石田自身、俳優としてテレビ番組やドラマに出演する中で、大切にしてきた思いがあるという。

 それは、視聴率に一喜一憂しないということ。目先の数字に惑わされない、ということだ。

「もちろん、視聴率への意識がゼロだったということではありません。ただ、それよりも、もっと面白いものを作ろう、もっと良いものにしようという、『前へ、前へ』と愚直に進む気持ちが大切だと考えています。視聴率というのは判明した瞬間に、すでに過去の話ですからね。『カイゼン』という言葉が僕は好きなのですが、この店も、お客さんにもっと喜んでもらおう、もっと良い店にしようということに夢中になってやっていきたいんです」

次のページ
「人生最後の勝負だと思ってやっていく」