※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)

失われた機能の回復や残った機能を伸ばし、日々の活動を育む医療であるリハビリテーション医療(以下、リハビリ)。対象は身体障害児から、脳卒中などの病気やけがで障害が残った人、がんや難病、加齢にともなって運動機能が低下した人まで広範囲におよびます。このうち、近年、ニーズが高まっているのが「訪問リハビリ」です。リハビリ医で医療法人社団輝生会理事長の水間正澄医師に、患者の実例から、訪問リハビリの様子についてうかがいました(患者のプライバシーに配慮し、一部、内容を変更しています)。

【写真】実例を教えてくれた水間正澄医師

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 東京都在住の幸子さん(仮名、当時86歳)は、数年前に夫と死別し、一人暮らし。趣味の手芸サークルのために月に1回、電車を乗り継いで1時間の場所に通うのが生きがいでした。ところがある日、部屋の中で転倒、大腿骨(だいたいこつ)を骨折してしまいます。

 搬送先の病院で手術を受けた後、回復期リハビリテーションのできる病院に転院。約1カ月間、入院してリハビリに取り組みました。高齢者が大腿骨骨折をした場合、リハビリをしても歩行能力は、骨折前よりも低下します。回復期リハビリの病院では入院の最大日数が決まっていますが(幸子さんの場合は3カ月)、本人の希望から、杖を使って家の中を移動できるところまで回復した時点で、退院となりました。

 リハビリをおこなうリハビリ科は内科や外科などと同じく、医療の専門分野の一つです。リハビリを専門とするリハビリ科の医師が理学療法士や作業療法士、言語聴覚士たちとチームを組み、病気やけがでからだの機能を失った人や、高齢になってからだが動かなくなってきた人などに、薬や治療機器を使ったり、機能訓練などをおこなって機能の維持や向上をめざします。

 幸子さんのように、骨折後、障害された機能が元に戻っていない場合は、退院後もリハビリを受けることができます。専門的には「生活期リハビリ」といわれるものです。

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リハビリには医療保険と介護保険の2種類ある