さまざまな検査によって、がんの深さ、近くのリンパ節や離れた臓器などへの転移の有無、悪性度がどのくらいかなどを診断します。胃がんは、深さによって、がんが粘膜とその下の粘膜下層にある早期がん、それより深いところに及んでいる進行がんに大別されます。また、深さに加え、近くのリンパ節、離れた臓器などへの転移の有無によって、ステージI~IVに分けられます。

 主な治療法は、内視鏡治療、手術、薬物療法(抗がん剤治療)で、ステージや悪性度などによって推奨される治療法が異なります。

 なお、治療前の診断はあくまで「推定」されたものであり、実際に手術などで切除した病巣を病理診断した結果、例えば「治療前の診断より広がっていた」「悪性度が高かった」などがわかる場合もあります。 

■胃の内側から粘膜をとる内視鏡治療のメリットとは

 内視鏡治療は、早期がんのうち、がんが粘膜にとどまっていて、リンパ節転移の危険性がほとんどない場合に推奨されます。おなかを大きく切開しないので、からだへの負担が少ない、胃の形が保たれ治療後の食事のとり方に大きな変化がないというメリットがあります。

 とはいっても、切除した病巣を顕微鏡で調べたら、事前の診断より深いところにがんが及んでいて、再発を防ぐための追加手術が必要になることもあります。

 この追加手術を受けるかどうかで悩む人もいます。福島県立医科大学病院内視鏡診療部長の引地拓人医師は次のように話します。

「追加手術が必要になった人のうち、実際に手術を受けるのは3分の2ぐらいです。若い人には受けてもらえますが、80歳を超えていて持病のある高齢者のなかには、手術はもういいです、転移してもそれが自分の人生だから、と追加手術を希望しない人が少なからずいて、こちらも無理にすすめることはできません。ただし、深さの程度によっては転移のリスクが高いため、強くすすめることもあります」

 手術は、がんが粘膜下層やそれより深く入り込んでいるものの、遠くの臓器に転移していない場合におこなわれます。

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手術で胃をすべて切除か、一部でも残せるか