からだを元気に保ち活動するために欠かすことのできないのが、毎日の食事。胃は、食べ物を一時的にためる、消化・分解する、一部の栄養を吸収する、少しずつ腸へ送るなどの役割を果たし、日々の生活を支えています。その大切な胃にがんができ手術を受けると、人によっては体重の減少が続き、活動が低下してしまうこともあります。胃がんになる人は、毎年10万人以上。50代以降の人、特に男性は注意する必要があります。本記事は、 2023年2月27日発売の『手術数でわかる いい病院2023』で取材した医師の協力のもと作成し、お届けします。

【データ】がんの転移、主な症状は?診療科は?

*  *  *

 胃がんの罹患者数は減ってはいるものの、2019年には約12万4千人が胃がんと診断されました。部位別の罹患者数では、大腸がん、肺がんに次いで3位となっています。また、男性が女性の約2倍の多さという特徴があります。年齢的には、40代後半から50代で増え始め、年齢が高くなるほど多くなり、男性のピークは80代です。死亡率は低下しており、早期であれば治癒する人の割合は90%以上とされます。

 胃がんの危険因子には、塩分のとり過ぎや喫煙、ピロリ菌感染などが挙げられます。これらは慢性胃炎の危険因子でもあり、慢性的な炎症があると胃がんが起こりやすいと考えられています。ピロリ菌の感染には衛生環境の良しあしが関係すると考えられており、若年世代では感染率が低下しています。ただし、ピロリ菌に感染していないからといって、胃がんにならないというわけではありません。

■「胃潰瘍かも」と受診し、胃がんが見つかることもある

 胃がんの多くは、胃壁の内側の粘膜に発生します。

 胃壁は、層構造になっていて、内側から「粘膜」「粘膜下層」「固有筋層」「漿膜(しょうまく)下層」「漿膜」に分かれています。粘膜で発生したごく小さながんは、大きくなるほか、深いところへと徐々に入り込み、いちばん外側の漿膜を越えて近くの膵臓や脾臓、肝臓、大腸(横行結腸)に直接広がることがあります。また、リンパ管に入ってリンパ節に転移したり、血管に入って血液にのり近くの臓器や遠くの臓器に転移したりします。

次のページ
胃がんは、早い段階では症状がないことが多い