その後ロッタンに敗れ王座を手放したハガティーだが、今年1月に武尊が右ミドルの連打動画をアップすると、「左の蹴りはこうやって蹴るんだ」と自身の左ミドル連打動画を武尊に向けアップ。武尊もこれに反応し、ハガティーに返す形で左ミドルの連打動画を再びアップした。

 ハガティーはこの動画を見て、「Power no goooooood」と笑顔の絵文字をつけコメント。「いつかあなたを蹴るよ」と武尊が返すと、ハガティーも「あぁ、いいよ。ヒジを返すから」とさらに応戦してみせた。

 このコメントからも分かる通り、現在ロッタンとハガティーはヒジと首相撲を認め、オープンフィンガーグローブ(OFG、4オンス)を着用して行うONEムエタイルールを主戦場としている。

 武尊戦実現には団体とルールの壁が存在するが、武尊はムエタイ修行の経験を持ち、過去の会見では小澤海斗を首相撲の要領で転倒させるなど、ムエタイ適性を感じさせる場面もあった。クラッシャーぶりは明らかなだけに、薄いOFGでの戦いには興味と期待を禁じ得ない。

 またONEではムエタイルールだけでなく8オンスのボクシンググローブを着用し、ヒジを禁じたキックボクシングルールも行われており、こちらのランキングでもロッタンは1位につけている。

 ONEキックルールのフライ級(61.2kg)王者は身長178センチメートルで長い手足を持つイリアス・エナッシ(オランダ)。フットワークから繰り出す、リーチを生かした多彩な攻撃が持ち味だ。また同級4位には天心と2度に渡り戦ったテクニシャンの内藤大樹もつけている。

 武尊との対戦を前に、天心は2人の世界観の違いを「ディズニーとユニバ」と評し、試合後は「悟空とルフィ」だったと語った。

 これまでK-1を背負い戦ってきた武尊だが、異なる世界へ飛び込めば、今までと違う新たな展開が生まれる。従来通りの立ち技路線でさらなる盛り上がりを生み出すか、あるいはMMA挑戦で驚きを提供してくれるのか。ひとまず今は重圧から離れ、純粋に格闘技を楽しむ姿が安堵させてくれる。(文/長谷川亮)

●プロフィール
長谷川亮/1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」 編集部を経て2005年よりフリーのライターに。 格闘技を中心に取材を続けている。 そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『 琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督、格闘技・プロレスのインタビューチャンネル『 青コーナー』の運営も。