日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「今年の冬のインフルエンザの流行」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。
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10月に入り、インフルエンザワクチンの予防接種が始まりました。私の勤務先のクリニックでは、まだ接種予約に空きがある状況であり、昨年よりも接種希望者の出足は遅い印象です。
英国の国民保健サービス(N H S)や米国の疾病管理予防センター(CDC)は、今年の冬のコロナとインフルの同時流行(以下、ツインデミック)を警告しています。コロナのパンデミックが起きてからの冬の2シーズンにおいて、「冬になるとツインデミックが起きる可能性がある」との警告が発せられていたものの、インフルエンザの冬の流行はありませんでした。
しかしながら、今年に入り新型コロナウイルス感染症に関連した規制が緩和・解除された国が多いことや、南半球のオーストラリアでインフルエンザが流行したこと、コロナが流行してからインフルエンザの流行を認めなかったことによる免疫力の低下から、特に免疫の低い高齢者や乳幼児が最も危険にさらされている可能性があると懸念されているのです。
こうしたツインデミックの可能性が報道されているからなのでしょう。「インフルと4回目のコロナワクチンは、それぞれいつごろ接種するのが一番いいのでしょうか?」と外来診療の現場に出ていると、質問されることが増えてきました。
これまでのインフルエンザの流行時期や、昨年の新型コロナウイルスの冬の流行状況、それに加え、ワクチンの予防効果が2カ月程度であることを考慮すると、10月末から11月中旬までに接種すればいいのではないかと私は考えています。ワクチンは、流行の直前に接種し、流行に備えるのが合理的です。接種時期が流行よりも早すぎると、流行時に予防効果が落ちている可能性があるからです。