「詰め込み」「偏差値」というイメージが強い中学受験。「受験のための勉強は子どもの将来に役に立つの?」「難易度より、子どもを伸ばしてくれる学校を選びたい」といった悩みを抱えている親御さんも増えています。思い切って「偏差値」というものさしから一度離れて、中学受験を考えてみては――。こう提案するのは、探究学習の第一人者である矢萩邦彦さんと、「きょうこ先生」としておなじみのプロ家庭教師・安浪京子さんです。連載27回目の今回は、夏休み後半にコロナに罹ってしまった息子さんをもつお母さんからの相談です。

MENU ■「夏が勝負」は、塾が言っているだけ ■親が一緒になってオロオロしてはダメ ■みんな「そんなもん」だから気にする必要なし!

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■「夏が勝負」は、塾が言っているだけ

矢萩:まずはそもそも論からですが、多くの進学塾では、夏期講習がいかに大切で、そこで差がつくのかを「あおる」傾向にあるんです。7月に入ったくらいから「おまえら、この夏が勝負だぞ!」みたいなことを言い続ける。そうすると、年間の全体像が見えてない子は、「夏が勝負なんだ、夏にやらないとヤバいことになるんだ」と思っちゃうんですね。そんな気持ちを持ったまま今回のように何らかの事情で夏期講習を休むことになると、必要以上に遅れた感を持ってしまうんです。本当は巻き返せるのに。「夏が勝負」というのは、夏休みに真面目に勉強してもらうために塾が言っているだけ。まだ全然巻き返せるし、間に合う。ここで絶望して止まってしまったらさらに遅れてしまうし、少しずつでもやればやっただけ前に進むんだから頑張ろうよ、というマインドをまずは周りにいる大人がつけてあげるべきだと思いますね。

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安浪京子 矢萩邦彦
安浪京子 矢萩邦彦

安浪京子(やすなみ・きょうこ)/「きょうこ先生」として親しまれている中学受験専門カウンセラー、算数教育家。佐藤亮子さんとの共著『親がやるべき受験サポート』(朝日新聞出版)が好評。最新刊は『中学受験にチャレンジするきみへ 勉強とメンタルW必勝法』(大和書房)。

矢萩邦彦(やはぎ・くにひこ)/「知窓学舎」塾長、多摩大学大学院客員教授、実践教育ジャーナリスト。「探究学習」「リベラルアーツ」の第一人者として小学生から大学生、社会人まで指導。著書に『子どもが「学びたくなる」育て方』(ダイヤモンド社)『新装改訂版 中学受験を考えたときに読む本 教育のプロフェッショナルと考える保護者のための「正しい知識とマインドセット」』(二見書房)。

NEXT夏を価値ある時間として過ごせる子は「半分もいない」
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