常陸太田市役所
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茨城県常陸太田市で、市職員のミスによる下水道設備の不備が発覚。21日、改修工事の費用4億円の一部に充てるため、全職員の給与をカットするとした条例改正案を市議会に提出したが、審議時間の不足などを理由に継続審査となった。ミスとは関係ない職員の給与をカットするという異例の方針に職員からは不満の声も出ているようだが、こうした市長の方針に問題はないのか。不服の場合、拒否することはできるのか。

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 コトの発端は今年4月。市内の団地で完成したばかりの下水道から水が噴き出すという不具合が発生した。その後の調査で、団地に下水道を整備する際、市の担当者が計算を誤って設計を発注していたことが発覚。さらに他の地区でも、下水道の設計にミスがあったことが明らかになった。

 改修工事には約4億円かかる見通しだが、担当職員らはすでに減給の懲戒処分を受けており、宮田達夫市長も7月から3カ月間の給与50%減額になるなど、特別職3人も減給となった。

 さらに市は、全額を税金で補填することは市民の理解が得られないとして、10月から1年6カ月の間、市長ら特別職は給与の5%、約560人の職員全員の給与を1~2%減額し、改修費用の一部に充てる条例案を議会に提出した。職員は年2万9015円~13万8358円が減額される見通しだという。

 ミスとは無関係の職員の給与までカットするという異例の方針に、ネット上でも「かわいそう」「無関係の職員は不満でしょう、士気が下がってしまう」など同情の声がある一方で、「税金で全額補填は許せない」「大損失を出しておきながら1~2%減額で士気が下がるなら公務員の資質はない」など、当然だといった意見も。

 一見強引ともとれる、こうした全職員の給与をカットする方針に法的な問題はないのか。

 企業法務やコンプライアンスに詳しい村松由紀子弁護士(弁護士法人クローバー)によると、地方公務員の給与は議会によって条例で定められる。今回も条例改正案を議会に諮っているため、手続き自体に問題はないという。

「継続審査となったので、そこで妥当性について議論されるのだろうと思います」

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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「市長の減額が小さすぎる」という声も