※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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「年だから仕方ない」「認知症だったら怖い」などと、物忘れを放置していないだろうか。前段階やごく初期の認知症なら、発症や進行を防げることがあり、治る病気が隠れていることもある。まずは原因を調べることが大切だ。

【図】認知症?それとも物忘れ?「軽度認知障害」とは

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 その物忘れが老化によるものなのか認知症によるものなのか、症状だけで判断するのは難しい。不安なら精神科や脳神経内科、脳神経外科、老年科などへの受診をおすすめする。国立精神・神経医療研究センター病院認知症センター長の塚本忠医師は次のように話す。

「地域で認知症をみようという動きが進んでいて、『物忘れ外来』などを設置する病院は増えています。まずはかかりつけ医に相談してもいいですし、地域の『認知症サポート医』や市区町村の『認知症疾患医療センター』などを調べて受診してもいいでしょう」

 認知症は、脳の障害や病気により記憶力や判断力などの認知機能が低下し、日常生活に影響が出ている状態をさす。物忘れ以外にも、以前と比べて行動や性格が変わったようにみえ、それにより対人関係が悪化している場合などは注意が必要だ。

 物忘れの診察は、どのような症状がいつごろから、どんなときに表れるかなどを患者本人や家族からくわしく聞き、病歴や薬の服用についても確認することから始まる。

 認知機能を調べる「神経心理学的検査」には、簡易検査(スクリーニング)から、臨床心理士が時間をかけておこなう検査まで多くの方法がある。

 簡易検査では「改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS−R)」や「ミニメンタルステート検査(MMSE)」が用いられることが多い。どちらも30点満点で、HDS−Rでは20点以下、MMSEでは23点以下だと「認知症の疑いがある」と判断される。

■複数の方法で多角的に診断する

 どの検査をどう組み合わせるかは、患者の症状や病院の方針で異なる。あしかりクリニック副院長の須貝佑一医師は、「記憶力や判断力などの状態を多角的にみるために、物忘れで受診した患者さん全員に、HDS−RとMMSEの両方をおこなっています」と言う。

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3要素をみて認知症かどうかの診断