WHOのホームページより。サル痘の特集が紹介されている
WHOのホームページより。サル痘の特集が紹介されている

 25日、日本で「サル痘」の感染者が初めて確認された。感染者数は世界75カ国・地域で1万8千人(7月25日時点)と急激に増加している。世界保健機関(WHO)も緊急事態を宣言した。新型コロナに加えて、サル痘のリスクが伝えられると、SNSでは不安の声が多数上がっている。現時点で推測される感染経路などについて専門家の見解を聞いた。

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「これまでにない感染の広がりを見せている」

 こう言うのはサル痘について研究する、札幌市保健所の西條政幸医療政策担当部長だ。現在、世界ではサル痘の感染拡大が急速に進んでいる。

 アメリカ疾病対策センター(CDC)のデータによると、感染状況は6月7日時点では1088人、29カ国・地域だったのが、7月5日には6924人、52カ国・地域に増加。7月25日時点で1万8095人、75カ国・地域に急増している。

 現在の感染の中心地はアメリカやヨーロッパだ。上位5カ国を見ると、アメリカが3846人で最多。続いて、スペインが3125人、ドイツが2352人、イギリスが2208人、フランスが1567人となっている。

 こうした状況を受けて、23日、WHOのテドロス事務局長は「世界的なサル痘の急激な増加が国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態である」と宣言した。新型コロナ以来の最高レベルの警告だ。

 25日に日本でも初感染者が出たことが報道されると、SNSでは<コロナも収まっていないのに、勘弁してほしい><サル痘のほうが心配になってきた>などと不安の声が上がった。

 そもそも、サル痘とはどんな病気なのか。厚生労働省や国立感染症研究所などの情報をまとめると、潜伏期間は7~14日間で、発熱、頭痛、リンパ節の腫れ、筋肉痛などの症状が出る。発熱の1~3日後に発疹が出るが、2~4週間で治る。アフリカでの致死率は数%~10%程度と報告されているが、先進国ではこれまで死亡例の報告はないという。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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感染拡大も、変異による可能性は低い?