中国でも人気が高い新垣結衣
中国でも人気が高い新垣結衣

「例えば、中国では2018年に放映された連続ドラマ『如懿伝 ~紫禁城に散る宿命の王妃~』の主演女優・周迅(ジョウ・シュン)のギャラは30億円だったと国営メディアが報じています。脱税疑惑で日本でも話題となった女優・范氷氷(ファン・ビンビン)も、中国の人気バラエティー番組『極限前進』の出演ギャラ(1シーズン)が6000万元(12億円)だったとも報じられています。しかし、最近では高額ギャラに対する庶民の批判の声が高まったせいで、映像コンテンツを管轄する国家新聞出版広電総局が2月に新たな基準を設けました。ドラマ・映画の制作にあたり、俳優へのギャラは制作費の40%を超えてはならず、最大で4000万元(約8億円)以下にするという取り決めです。これにより、人気俳優のギャラは半額以下になったと言われていますが、それでも日本に比べるとまだずいぶん高いですよね」

■中国への「出稼ぎ」が加速する!?

 中国は2001年のWTO(世界貿易機関)加盟を機に、映像コンテンツの世界輸出を活発化させている。世界水準のレベルを目指し、商業化のための技術革新も進んだ。2015年頃からはインターネット配信も隆盛を極め、世界輸出がさらに加速。ハリウッドを超えるドル箱産業へと急成長を遂げていった。制作費が桁違いなだけに、演者へのギャラも相対的に高くなっていったのだ。

「日本ではテレビ離れが叫ばれて久しいですが、中国では大都市部以外はまだまだテレビの影響力が強い。各局のCM広告収入も日本とは桁違いで、番組スポンサーである企業もCM枠の奪い合いになっているほど。出演者へのギャラも高くなるのは当然でしょう」(前出の中国ウオッチャー)

 日中の芸能人の「ギャラ格差」は今後、人材流出を生み出す要因となるかもしれない。ジャーナリストの周来友氏は言う。

「私は日本で約20年間、テレビの仕事に携わっていますが、ギャラは年々下がっていますよ(笑)。一方、中国のエンタメ業界は、10年くらい前まで視聴率や話題作りのため、高額な海外タレントを招聘して番組を制作していました。しかし今は逆に国内の芸能人のギャラが高すぎるので、海外タレントを呼んでくる流れになっています。今後は、日本の芸能人も中国に出稼ぎに行くような時代が来るでしょう。例えば人気番組の場合、単発での出演でも日本のドラマ1クールと同額のギャラになりますからね。ただし、向こうのテレビに出たければ、中国政府にこびるような言動やリップサービスをしなければいけないので、その覚悟を持って中国進出しようとする日本の芸能人はまだ少ないかもしれません」

 日本の芸能人は、今や中国では「同情すべき存在」となっているのだろうか。日本エンタメ界の巻き返しを期待したい。(山重慶子)

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山重慶子

山重慶子

神奈川県生まれ。大学卒業後、中国・上海へ留学。現地でフリーペーパーの編集者となり、帰国後は主に中国や台湾関連の原稿執筆・コンテンツ制作を行っている。

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