乳がんには、がん細胞の性質によりいくつかのタイプがありますが、一般的に、妊娠・授乳期に見つかる場合は悪性度の高いがんが多く、進行が早く予後が悪い傾向があります。早期に治療を開始するため授乳を断念することもあるでしょう。

――妊娠中や産後の授乳期に乳がんと診断された時の心構えを教えてください。

 乳がんの治療は進歩しており、妊娠中や授乳期でも、適切な治療をすればがんを治すことも十分に可能であるという自信を持って、私たちは治療に臨んでいます。医師を信じて、その時にできる治療を続けていただきたいと思います。この時期の乳がん治療は産婦人科との連携が必要であり、多科・多職種連携など幅広い治療のための態勢が整っている病院で治療を受けられると安心です。このような施設は、現在のところまだ多くはありませんが、今後増えていくことを期待しています。

 また、妊娠・出産期に限らず、早期発見できるほど治療の選択肢は広がるため、乳がんになる可能性を意識して過ごすことも大事だと思います。

(構成/出村真理子)

福間英祐(ふくま・えいすけ)医師

亀田総合病院 乳腺科主任部長

岩手医科大学卒業。日本乳癌学会認定医・専門医・指導医、検診マンモグラフィ読影認定医、日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会顧問。2000年に同院に着任して以来、時代とともに変化する世界の乳腺診療に目を向けつつ、乳がん患者の心身の負担を少しでも減らせるよう、多様なサービスに対応できる乳腺診療の体制づくりを推進してきた。治療においては、乳がんの根治と整容性の両立を目指し、内視鏡による手術や切らずに治す凍結療法、オンコプラスティックサージャリー、がん術後リンパ浮腫専門医との連携などにも積極的に取り組む。