西武鉄道から移籍後も「ニューレッドアロー」の車両愛称を引き継ぐ富山地方鉄道の20020形(提供/富山地方鉄道)
西武鉄道から移籍後も「ニューレッドアロー」の車両愛称を引き継ぐ富山地方鉄道の20020形(提供/富山地方鉄道)

 鉄道の世界では世代交代に伴って毎年車両が引退し、その役割を終えている。しかし引退した車両のその後をたどると、中小の私鉄に移籍して再デビューを果たしているものや、装いも新たに復活を遂げた車両もある。富山を走る元西武鉄道の車両、長野を走る元東武鉄道の車両――。2022年に「移籍」「復活」した車両を紹介する。

【写真】東急、東武、西武…地方で活躍する往年の車両たち

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(1)移籍車両

富山地方鉄道20020形(元西武鉄道ニューレッドアロー)
(2022年2月19日から営業運転開始)

 2022年の移籍車両デビューの先陣を切ったのは、富山地方鉄道(以下、地鉄)の20020形。現在も西武鉄道(以下、西武)の特急<小江戸>で活躍する10000系ニューレッドアローが新たな舞台に立つ。

 地鉄によると、2018年度に10000系ニューレッドアローが廃車となる情報を得て、19年度から西武と打ち合わせ、4両(営業用は3両)を購入することになったという。コロナ禍などの影響で20年度は車体の購入のみにとどめ、21年度に改造計画を立てる方向で落ち着いた。このため、デビューは22年2月19日となった。

 改造については稲荷町方先頭車のモハ20021を電装し、床下に補助電源装置及び空気圧縮機を搭載。トイレ、洗面所、自動販売機などのスペースを撤去し、優先座席8席を設けた。先頭車の運転台にはドライブレコーダーを設置。ワンマン運転でも乗務員が車内確認しやすいよう、運転室出入り口のドア、運転席の後方にはガラス張りの開口部を設けた。

 さらに車内に交通系ICカード「ecomyca(えこまいか)」のみ対応の運賃箱、車内確認用カメラ8台を設置、保安装置は地鉄仕様のATS(自動列車停止装置)に変更した。最高速度も110km/hから95km/hに引き下げた。

 20020形の由来は、車両の主電動機の出力が150kWで、馬力換算すると約200馬力になること。さらに元西武5000系レッドアローの16010形(10形)に続く形式として、20020形(20形)にしたという。

 ちなみに新旧レッドアローが旅客列車として“共演”するのは1995年以来27年ぶりである。

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