無料PCR検査会場は全国に設置された(写真と本文は関係ありません)
無料PCR検査会場は全国に設置された(写真と本文は関係ありません)

 いわば「保険金目当て」に無料PCR検査を受けていることを、当の保険会社はどう捉えているのか。コロナ保険を提供する損害保険ジャパンは、エッセンシャルワーカーが安心して働けるように保険を提供しているとしたうえで、「保険金を目当てにPCR検査を積極的に受けている人についても、陽性になればお支払いする。ただ、その動機について、コメントする立場にはありません」(広報)。同じく第一生命保険も「回答を控えたい」ということだった。

■「わざとコロナにかかる人がいそう」の声

 ある保険会社の関係者は「保険料を払い、陽性になったから、保険を受けとるという行為になんら問題はない」と明言した上で、コロナ保険の“副作用”について、こう心配する。

「PCR検査を受けることで無症状者を見つけ出すことにつながっているのであれば良いことだと思うが、『感染してもいい』という意識につながって感染対策が緩んでいるのであれば、これは問題。重症化しにくいとはいえ、症状が重く、後遺症で苦しむ人も多い。ただ、会社として対策しようがないのが正直なところです」

 事実、SNSでも「わざとコロナにかかるような人がいそう」「検査受けまくって陽性になろうと企んでも不思議ではない」といった声も散見する。タイでは昨年、コロナ保険金を目当てに意図的に感染する事例が相次ぎ、感染拡大の一因になったことが指摘されている。

 一方で、保険金目当ての人たちにも“誤算”が広がっている。保険各社が、予想外のオミクロン株の感染拡大を受けて、保険料の値上げに動いたからだ。たとえば、当初3カ月500円だった保険料が2月から1500円に、また、890円だった保険料が3月から8090円に、などとグンと上がっている。

 こうした値上げを受けて、冒頭の男性は「更新はしない」という。他方で、先の女性は「感染の状況次第ではまだお得感がある」と見る。ちなみにこの男性と女性は「感染対策は緩めていない」という。

 感染すれば、自分だけではなく、周りの人にも命のリスクが出てくる。意図的な感染だけは避けてもらいたいところだ。(AERAdot.編集部・吉崎洋夫)

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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