週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』より
週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』より

 放射線治療にはX線をからだの外から当てる外照射と、放射線を放出する線源を体内の前立腺に埋め込む内照射(LDRなどの小線源治療)がある。この二つも同等の成績が見込める。

  また、前立腺がんの進行は、がんの悪性度が高くなければゆっくりであることが多い。そのため、治療法の選択に迷うケースも少なくない。

  各治療法を比較するうえで、いくつかのポイントを押さえておこう。まず、治療の合併症について。手術では術後すぐから、尿漏れや性機能障害が起こるが、数カ月~1年ほどで回復していく。一方、放射線治療は治療中~治療後数カ月くらいに排尿困難、頻尿などが起こる。直腸出血などは治療後、数年たって起こることもある。

 LDRは直腸や膀胱などの周辺の臓器への影響が少なく、合併症の頻度は低いが、3カ月程度、頻尿や排尿困難がみられる。

 ただ、再発したときのことも念頭に置きたい。初回に放射線治療を受けると組織に癒着が起こって切除しにくい状態になり、再発時に手術ができないこともありえるのだ。

 ■手術、放射線とも年50例が治療数の目安

 次に、治療期間について。手術は1週間~10日程度、LDRは3、4日程度の入院が必要になる。外照射は通院治療が可能だが、終了まで1~2カ月程度の通院が必要になる。

 関西医科大学病院の木下秀文医師は次のように話す。

「50代の若い患者さんなら、長い経過を考慮して、最初の治療は手術をすすめることが多いです。高齢の患者さんなら放射線治療やホルモン療法を選ぶこともあります。自身の活動性や生活環境、ライフスタイルを含めて、納得がいくまで担当医師と相談して、決定してください」

 手術は腹腔鏡手術、あるいは手術支援ロボット「ダビンチ」を用いたロボット手術がある。ロボット手術は2012年に保険適用になり、現在では主流になっている。しかし、例えば腹腔鏡手術数は多いが、ロボット手術はおこなっていない、外照射よりLDRの症例数が多いなど、症例数に偏りがある場合もある。上尾中央総合病院の佐藤聡医師はこう話す。

「病院によって、考え方や設備の違いなどで、重点を置いている治療法が異なります。希望する治療法の症例数を目安に病院を選んでください。それだけでは不安なら、複数の治療法をバランスよく手がける病院で、セカンドオピニオンを受けるのもいいでしょう」

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