
双葉山さんは理事としての功績も大きいよね。なんといっても、それまで系統別だった対戦を今の部屋別の総当たり制にしたことだ。今の相撲の隆盛を見れば、その先見の明はすばらしい。部屋別総当たり制になって、佐田乃山さんと栃ノ海さん、玉乃島さんと大鵬さんの取り組みを見たときは、俺たち現役の力士も興奮したもんだ。
他に対戦してみたいのは、そうだなぁ、舞の海がどういう相撲を取るかも興味があるね。俺が突っ張って突き放したとしても、手八丁足八丁で、その上を行って仕掛けてくるんだろうなぁ。俺はそれにやられて頭からばたんと落ちて、まげが砂まみれになっている姿しか想像できん……。俺が勝つとしたら突っ張って突き倒すしかないかな。それに疲れたら、彼のペースでやられるだろう。
今の現役力士だと、阿炎が俺の突っ張るスタイルと似ているから肌を合わせてみたいね。突っ張り一本鎗で突き出すように立ち会って、突っ張りきるのは、肝が据わってないとなかなかできない。突っ張りで押していくと、どうしても「はたいて勝ちたい」という気持ちが出るもんだけど、阿炎はバーっと最後まで突っ張り切るから、あの相撲見ていたら、度胸があって気風がいいなと思うよ。寺尾(錣山)が師匠だから、彼の相撲を受け継いでるんだろうな。
阿炎との取り組みは、俺と高砂部屋の突貫小僧と呼ばれた富士櫻との相撲みたいになりそうだね。富士櫻との対戦は楽しかったよ。俺は突っ張りで、富士桜は押し相撲の真っ向勝負だ。富士櫻は押してくるし、俺も突き放して、突っ張って、はたいて、押してきて、突き放して、そういう攻防があった。まあ、最後はいつも俺がはたき込んで勝つんだけどね。富士櫻は俺に4~5回負けているから、合口悪くて嫌だと思っているんじゃないかな。逆に俺が負けていたら、ここで富士櫻の名前は出さなかったもん(笑)。強烈な張り手で“フックの花”と呼ばれた福の花や、足が長くて四つで組む龍虎さんとの対戦は「楽しかった」なんて思わないもの(苦笑)。