歌舞伎町の「トー横」には多くの若者が集まっていた(撮影/岩下明日香)
歌舞伎町の「トー横」には多くの若者が集まっていた(撮影/岩下明日香)

「(居酒屋などの)店に入るお金がなく、路上でストロング缶をストローで飲んでいる子たちに対して、一晩何十万何百万もお金を作るホストや風俗嬢などが、蔑視の意味を込めて『キッズ』と呼ぶようになったのが『トー横キッズ』の発祥です。だから昔の『トー横キッズ』と今はまったくの別物。すでに世代交代しています。今では、メディアに取り沙汰されて観光名所のようになってしまいましたが、路地の奥に入れば、まだ変わらずに闇が深いままです」

 ホストクラブへの間口もSNSなどを通じて広がっている。歌舞伎町へ行けばTikTok やYouTubeに登場する人気ホストに実際に会える。「親同伴」でホストクラブに来る女の子もいるほど、手の届きやすい存在になっている。アイドルの「推し活」のようにホストへの消費も活発になり、いまのホストクラブはバブル状態だという。

「『ホストに会いに行く』と言うと、友人や親からは“だまされている”と注意されますが、『推しに会いに行く』と言ってしまえば、アイドルにハマっているだけのように聞こえがいいんです。でも結局、お金を使っていないと『推し』や『担当』とは認めてもらえない。ホストにどれだけ貢いだかという女同士のマウントに行きつくのは結局一緒です」

 貢いだ末、「ホス狂い」になった女性も本に登場する。チワワさんは、全部が見えなくなるくらいのホストには出会えておらず、「沼にハマろうとしても、結局浅瀬にしか立っていない」と自己分析する。

 でもだからこそ、どっぷりとハマった若者では語りづらい歌舞伎町の現象を、沼に足を付けつつも俯瞰的に見ることができる。それが著者の強みになっている。(AERA dot.編集部 岩下明日香)