安倍晋三前首相の秘蔵っ子として、タカ派のイメージが強かった衆院議員の稲田朋美氏。ところが最近、LGBT関連法案を提出し、近著『強くて優しい国』の表紙では柔和な表情で微笑むなど以前からは考えられない言動が目立つ。それに対して、保守層からは「変節した」という批判も。変化の理由とは。本人に直接聞いてみた。
>>【前半】稲田朋美氏が自民党総裁選不出馬と明言 「菅内閣で国民の審判を受けるべき」
* * *
「こんなモノがきてるんですよ」
取材中、稲田氏から一枚の文書を見せてもらった。茶封筒に入って送られてきたという。 A3サイズのカラー印刷で、文面には「選択的夫婦別姓を推進している人たち」とあり、稲田氏の顔写真の横に印がついていた。
「うちの事務所に何回も送られてきています。地元の国会議員とか経済界とかにもばらまかれているようです」
そう言っているうちに、秘書が新しい封筒が送られて来たと持ってきた。「これまでのバージョンとは違う」と困惑する稲田氏。
稲田氏といえば、防衛相も務めたガチガチの保守、「タカ派」のイメージだった。以前は「保守的な家族観」で「選択的夫婦別姓」をはなから反対していた。それが最近、変わってきた。まずは、 稲田氏の提唱しているオリジナルの「婚前氏続称制度」について聞いてみよう。
「私の案は、通称を法的な意味を持つ名前にしましょうというのが根本的な考え方です。 『選択的夫婦別姓』では、夫婦の戸籍を別々にするとか、子供の姓を一人一人議論して決めていかなきゃいけなくなるとか、いろいろなデメリットがあると思うんですね」
既に民法にある「婚氏(こんし)続称制度」(一定の手続きをすれば離婚後も婚姻中の氏を使える制度)にヒントを得たもの。昨年11月の法務委員会で、稲田氏がこの「婚前氏続称制度」を提案し、党内で大きな議論に発展した。
稲田氏は、具体例を示しなら、弁護士らしく合理的な理由とともに、次のように持論を展開した。
「現行の民法では、離婚したら旧姓に戻るのですが、3カ月以内に届け出れば婚姻中に使っていた氏を使うことができる(婚氏続称制度)。私の案は、これを離婚の時だけではなくて、結婚の時にも適用しましょうという制度です。旧姓を結婚後も使いたい時には、役所に届け出て、戸籍に記載して使い続けられる。民法と戸籍法を改正することでそれが可能になります。