大阪桐蔭の新チームで中心的な投手となりそうな川原嗣貴 (c)朝日新聞社
大阪桐蔭の新チームで中心的な投手となりそうな川原嗣貴 (c)朝日新聞社

 コロナ禍の影響や、雨での度重なる順延もありながら8月29日に幕を閉じた今年の夏の甲子園。ベスト4の近畿勢独占が大きな話題となったが、その一方で近畿勢6校のうち最初に敗れたのが大阪桐蔭(大阪)だったということに驚いた高校野球ファンも多かったのではないだろうか。

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 今年の大阪桐蔭の3年生は根尾昂(中日)や藤原恭大(ロッテ)を擁して春夏連覇を達成した世代と入れ替わりで入学してきた選手たちであり、入学当初から甲子園優勝も狙えると言われてきたチームである。

 実際秋の新チームから大阪府内では負けなしで、秋の近畿大会では準優勝、春の近畿大会では優勝を果たしているが、甲子園では春夏合わせて1勝と結果を残すことはできなかった。敗れた相手が智弁学園(奈良)、近江(滋賀)と力のあるチームだったことは確かだが、過去のチームにはなかった守備のミスが出るなど、コロナ禍で例年と同じように調整できなかった難しさは大阪桐蔭にも影響していたと言えそうだ。

 そして気になるのが秋からの新チームであるが、攻守ともに中心となるのがキャッチャーの松尾汐恩だ。選抜までは控えだったが、春の大阪府大会から正捕手に定着。この夏も背番号は12ながら下級生で唯一のレギュラーとしてプレーした。

 素早く正確なスローイング、安定したキャッチングはとても2年生とは思えないレベルにあり、甲子園では激しい雨の中でも安定した守備を披露。バッティングも8番を打っていたが大阪大会では4割を超える打率を残し、甲子園での近江戦でもセンターへホームランを放つなど長打力もあるところを見せている。ドラフト候補としても注目される存在になる可能性は高い。

 投手陣は右の川原嗣貴、別所孝亮、左の川井泰志の3人が中心となりそうだ。川原は190センチ近い長身の大型右腕で、長いリーチを生かした豪快な腕の振りが持ち味。近江戦では8回からマウンドに上がり決勝点を許して負け投手となったものの、ストレートの最速は144キロをマークして素質の片鱗は十分に見せている。この悔しさをバネに更に成長することを期待したい。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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