7月30日の会見で記者の質問に答える菅義偉首相(左)と政府分科会の尾身茂会長(C)朝日新聞社
7月30日の会見で記者の質問に答える菅義偉首相(左)と政府分科会の尾身茂会長(C)朝日新聞社

尾身茂会長の要請で会見直前、専門家らと面会する菅首相(C)朝日新聞社
尾身茂会長の要請で会見直前、専門家らと面会する菅首相(C)朝日新聞社

 新型コロナウイルス緊急事態宣言の対象地域拡大決定後の7月30日夜、記者会見した菅義偉首相の評判がすこぶる悪い。首相会見は同日午後7時のNHKニュースで生中継されたのだが、官邸からため息と嘆きの声が相次いだという。

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「会見は想定どおり厳しいものでした。首相の噛み合わない答弁はある意味、いつもと同じ。平常運転だったかと思います。あの人が何を語っても、全く国民にメッセージとして響かないですね。NHKの中継を見た国民は一層、失望したでしょう。最近は緊急事態宣言のたびに、NHKは生中継で会見を流していますが、相当程度、支持率低下に貢献していると思います(笑)。首相のボキャ貧はもとより、政治家としての発信力が決定的に欠如しています。プレゼンのトレーニングをした方がよいレベルです。政治家として致命的な問題ですね」(官邸関係者)

 記者に「首相は国民の命と健康を守ることが五輪開催の前提と発言したが、現在、国民の命と健康は守られているか。五輪はこのまま開催するのか」と詰められても、例のごとく、壊れたラジオのように「人流は抑制されている」「五輪をご自宅でテレビ観戦をしていただけるように要請をしっかり行っていきたい」とはぐらかした。

「医療崩壊して、救うべき命が救えなかったとき、首相を辞職する覚悟はあるか」と迫られると、「水際対策をきちっとやっています」とまたも噛みあわない首相の回答。記者が「辞職の覚悟について教えてください」と詰め寄ると、「しっかりと対応することが私の責任、私はできると思っています」とムスとした表情のまま、ガースー節で返した。

 菅首相とこの日夜、並び立って会見した新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は、対照的に身振り手振りや声も大きく、国民へ感情的に訴えかけるような場面が目立った。

「わかりやすく言えば、(会社の)課内で感染していた人が、課を越えて次の課に行き、部に行って、それで会社全体に、さらに他の会社に行くということになると、感染のリスクが高まる。これはある程度わかっているわけですね」

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尾身会長が会見直前に官邸に要請した面会の中身