「まるちゃんの静岡音頭」 (C)SAKURA PRODUCTION
「まるちゃんの静岡音頭」 (C)SAKURA PRODUCTION
まるちゃん音頭のラッピング電車(静岡市提供)
まるちゃん音頭のラッピング電車(静岡市提供)
「まるちゃんの静岡音頭」 (C)SAKURA PRODUCTION/MOGRAPHIXX
「まるちゃんの静岡音頭」 (C)SAKURA PRODUCTION/MOGRAPHIXX

 東京五輪で選手たちがめざましい活躍を見せる中、運営をめぐっては様々な不祥事が起き、"呪われた五輪”とまで称されてきた。その余波で、あまりにも不運な経過をたどっているのが「まるちゃんの静岡音頭」だ。この楽曲は、「ちびまる子ちゃん」の生みの親で2018年に亡くなった漫画家のさくらももこさんが作詞を手がけていて、ある思いも込められている。度重なるお蔵入りに、静岡市の担当者や関係者たちはどう思っているのだろうか。話を聞いた。

【画像】たまちゃん・友蔵が絶景の中で踊る「まるちゃん音頭」

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「まるちゃんの静岡音頭」は、静岡市が市の魅力をPRするご当地ソングとして、作曲に細野晴臣氏、編曲に小山田圭吾氏、ボーカルに静岡県出身のピエール瀧氏らを迎えて制作。2013年3月に完成した。

 鳴り物入りで楽曲が披露されたものの、2019年3月、ボーカルを担当するピエール瀧氏の薬物使用による逮捕を受けて、公式使用を中断。約2年間の“お蔵入り”を経て、今月、まる子役の声優・TARAKOさんを新たなボーカルに迎えて新バージョンの完成にこぎつけた。19日がお披露目となったが、その当日の夜、音頭の編曲を担当した小山田圭吾氏がまさかの五輪開会式の作曲担当を辞任。公開まもなくして2度目のお蔵入りに追い込まれてしまった。

「まさにこれからというところでしたので、残念。静岡音頭はさくらももこさんが作詞をしてくださっていて、市の大きな財産です。音頭が市のためになればと思ったのですが、今回は非常に残念でした」

 お披露目イベント当日の急転直下に、市の担当者はそう落胆する。

 そもそもこの「まるちゃん音頭」は、静岡市の魅力を市内外に発信するシティプロモーション事業の一環で、2012年にプロジェクトが発足。楽曲の制作は、さくらももこさんとゆかりのある制作会社「Cherry Music」に委託した。13年の完成後は、市役所のエレベーターやYouTube動画などで活用。毎年7月に音頭を披露するコンテストも開催してきた。

 TARAKOさんをボーカルに迎えた新バージョンでは、お披露目と同時にラッピング電車が初運行するなど、音頭の復活を華々しく祝った。そんな矢先の小山田氏辞任。「小山田さんのした行為が許せない」「そのまま使い続けていいのか」といった苦情が12件寄せられたという(7月30日時点)。市はこうした声を受け、お披露目からわずか2日後に楽曲使用の停止を決めた。

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「作品の罪はない」の声 作曲した細野晴臣氏の胸中は?