05年にアジア人として初めてホームランダービーに出場したチェ・ヒソプは「ビッグ・チョイ」と呼ばれた韓国出身の大砲で、カブス、マーリンズ、ドジャーズでプレー。身長196cm、体重99kgの体格はメジャーの大男たちに見劣りしない、アジア人としては規格外のものだった。05年のホームランダービーでは翌06年にWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)を控えているということもあり、国別対抗戦という形式が採用され、チェが選出。当時のホームランダービーは現行のルールとは違い、規定のアウト数で何本ホームランを打てるかを競う「アウト数制限制」だったとはいえ、ホームラン5本で第1ラウンド敗退。メジャーリーガーたちにパワーを見せつけることはできなかった。ちなみにその年に優勝したボビー・アブレイユ(フィリーズ)は第1ラウンドで24本を放っている。

「ホームランダービーは日本でいう『特打ち』みたいなものです。デンバーは普通に歩いていても息切れするような街だから、体力の消耗は相当あったはず。しかしシーズン中からルーティーンをしっかり構築しているから、翌日の先発登板もスムーズにいけた。二刀流へのサイクルに身体も慣れて一段と強くなっている。1イニングだけでしたが素晴らしい投球内容で勝利投手という記録に名前が残ったのも大きい。打者・大谷は前日にたくさん見たから良いでしょう(笑)」(MLBアジア地区担当スカウト)

 打者としては2打席とも内野ゴロに終わったが、拍手や歓声はトップクラスでスタンディングオベーションも見られた。投手としては最速100.2マイル(約161キロ)を計測するなど、全力投球で1回を3者凡退に抑えた。

「野茂英雄、イチロー、松井秀喜などには、世界に通用する技術力や精神力の強さを感じた。大谷はそれらに加えてフィジカル面の強さも感じる。これは体格面で劣るアジア系選手の弱点と言われてきた部分。NPB入団以来、そこの課題に向き合いトレーニングや食事などを徹底してレベルアップした。本物のメジャーリーガーだと改めて認識できました」(米国在住スポーツライター)

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精神的な面も一流