2021年1月末、マスク氏はTwitterのプロフィール欄に「#bitcoin」と記載しました。世界で5600万人がフォローしていた同アカウントの影響力は大きく、その行為のみで300万円前半だった1BTCの価格は、100万円近く高騰しました。そして2月8日にビットコインを1500億円以上分購入したこと開示し、ビットコインでテスラ車を購入できるようにする方針も明らかにしました。さらに、マスク氏がTwitterで「現金よりもましな流動性の形態」とツイートしたことで、ビットコインは急騰しました。その後も、マスク氏のツイートをきっかけに一時は1BTCの価格が700万円まで高騰しました。

 その後、5月を過ぎると、ビットコインの環境に与える負荷について言及、6月の「#Bitcoin(ハートが破れる絵文字)」をツイートしたことで、1BTCの価格は300万円台に下落し、ピーク時の半分の価値になりました。たった一人の発言や発信で通貨の価格が乱高下する事実に、世界中の投資家やインフルエンサーは戦慄しました。イーロン・マスク氏は、自動車メーカーのCEOです。彼自身は、多数のフォロワーを抱えてはいますが、コンテンツ発信を主とする純然たるインフルエンサーというよりはセレブ(有名人)です。彼のように、本来の活動はインフルエンサーではなくても、市場や経済に大きな影響をもたらす人物は、経済的インフルエンサーと言えます。

 現在は、TwitterやYouTubeで多くの人々が自分の意思や考えを発信しています。ちょっとしたきっかけで、フォロワーの少ない人でも大きな影響を与えることも多々あります。経済の指標に、インフルエンサーや名だたる経営者だけでなく、市井の人を含む個人の発言が影響する事実を、経済的インフルエンサーは示しています。