ところが、ホワイトソックスの4番ヨアン・モンカダを空振りに打ち取った最後の投球を捕手のマックス・スタッシー捕手が後逸し、一塁への悪送球から立て続けにミスが続いた。1塁ランナーだったジョー・アブレイユが一気に本塁に駆け込み、ベースカバーに入っていた大谷と衝突、そして同点に追いつかれるという悪夢のような展開に見舞われ、球場の歓声は一瞬にして悲鳴に変わった。

 幸いにもその場では大事には至らなかったものの、4月5日の試合は休養のためスタメンから外れる予定となった。5日の試合前会見で、マドン監督は「大谷は今日も試合に出たがっている」と健康をアピールしていたが、続投させたこのチームの判断に米メディアは疑問を持ったようである。フレッチャー記者は、「あの時マドン監督が大谷を降板させればあのアクシデントは起こらなかったかもしれない」と記事で述べている。マドン監督によれば、「今、彼に経験を与えなければ、今後どう乗り越えていくかを学べる機会は他にないではないか」ということだが、先述の「MLB NOW LIVE」では、出演者が「大谷の投打挑戦はこれで何年目だと思っているんでしょうか」と指摘し理解に苦しんだ様子を見せた。番組では「制球が乱れた時点で、行動すべきだった」と指摘、「シーズン序盤は降板のタイミングを早期に見極めるべきだ」と采配を強く非難している。

 もっとも、マドン監督が大谷に寄せる期待は高い。オープン戦とはいえ、打率.548、5本の本塁打を記録し、打撃も好調だった大谷。。この試合、米アメリカン・リーグで指名打者制度が導入された1973年以来初めて、エンゼルスは指名打者を解除するほどに大谷は今季エンゼルスの打者の主軸としても期待されている。もし今後、先発した大谷が途中降板すれば、同時に打者としても試合から”降りる”ことになる。マドン監督は、大谷の野手転向も示唆しており、投手から野手への交代の可能性もあるが、フレッチャー記者は、「今は現実的ではない」と一蹴した。

 今後、投手で打席に立つ可能性について、フレッチャー記者は「それは大谷本人次第」という予想に留めたが、メジャーリーグの歴史に残った初登板の試合で、大きな可能性を示したと同時に投打同時出場で起こるリスクも示した。投打同時出場という偉業を成し遂げた大谷。メジャーリーグにおいても未知の挑戦を続けるからこそ、米メディアはその起用法に高い関心を寄せるだろう。(澤良憲/YOSHINORI SAWA)