心療内科クリニック「SAHANA Retreat Spa & Clinic」(東京都)院長の内田さやか医師に、PMDDについて聞いた。
「PMDDの方を特に苦しめるのは、ダイナミックな体調の変化です。そもそも人間にとって変化はストレスです。PMDDのように毎月毎月、生理前になると急激に落ち込み、その後は何もなかったかのように平常通りになる、というジェットコースターのような変化は、アップダウンに伴う消耗も自己嫌悪も、ご本人にとってはとても大きなストレスなのです」
振り返れば、望月さんは中学時代から月経前になると腹痛や頭痛、腰痛に悩まされてきた。月経痛もひどく、一時期はピルを服用していたが、35歳のとき、転職などをきっかけに、月経前の症状がひどくなった。
「ある女性社員の嫌がらせがエスカレートして……。PMDDはストレスに大きく影響されるので、いま思えば、あのころ、新たな職場の人間関係のストレスが重くのしかかっていたのだと思います」(望月さん)
望月さんは帰宅すると、夫に愚痴をこぼすようになっていた。入社の翌年、望月さんはその女性とは別の部署へ異動。しかし、まったく望月さんの適性に合わない部署だった。
以前から、月経前になると体調を崩す症状は続いていたが、望月さんはひどいときは寝込むようになる。家で寝ている望月さんに対し、夫の不満はたまっていった。
望月さんが生理前の心身の不調を訴えても、夫は「甘えている」「家事をしたくない言い訳だ」と取り合わず、ケンカが増えるばかり。
ある日夫は、突然出ていってしまい、そのまま離婚することに。
「一度もやり直す努力もさせてもらえず、別れることになりました。本当に悲しくて、特に生理前に精神的不安を強く感じるようになってしまいました」(望月さん)
抑うつ状態が続き、仕事もままならなくなったので、休職を決意し、心療内科を受診。そこで医師から「最初はPMSが重いぐらいだったのが、PMDD発症に至ってしまったようだ」と診断を受けた。その結果、四六時中つらいという抑うつ状態は改善したものの、PMDDの症状は依然として軽減せず、ストレスに比例し、月経前には必ず出るようになっていた。
■復職しても「お遊び気分で良いですね」
しばらくして、望月さんは復職を果たしたが、周囲は腫れ物扱いで、上司や同僚に「なにか手伝うことはないですか?」と訊ねても、反応してくれる人はごくわずか。望月さんは月経前になると不眠の症状が出てきた上、動悸や息切れが激しくなっていった。