山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師
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写真はイメージ(GettyImages)
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 日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「日本で承認された子宮頸がんワクチン発売」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。

【図で解説】子宮頸がんと子宮体がんの違いは?

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 日本で承認された9価HPV ワクチンが今月24日より発売されることが先日発表されました。HPVワクチンとは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染予防に効果的なワクチンのこと。日本では子宮頸がんワクチンと呼ばれることが一般的であり、こちらの呼び名なら聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

 9価HPV ワクチンは2014年12月にアメリカで承認されたのをきっかけに、翌年の2月にはカナダ、6月にはオーストラリアと欧州連合(EU)で承認され、昨年7月時点で80カ国以上の国と地域で承認(※1) されています。日本は世界からはかけ離れた状況と言わざるを得なかった状況からほんの少し、世界の水準に近づくことができそうです。

 主に性交渉によって感染するHPVには100種類以上の型があり、子宮頸がんのほとんどは高リスク型のHPVに持続的に感染することで発症します。世界保健機関(WHO)によると、2020年には推定60万4千人の子宮頸がんが新たに診断され、34万1千人の女性がこの病気で亡くなりました。

 HPVの感染によって引き起こされるのは、子宮頸がんだけではありません。肛門がんや中咽頭がんなどもHPVの感染と関連していることがわかっています。そのため、米国や英国、カナダ、ブラジルなどでは、これらHPV関連がんの予防に対して女子だけでなく男子への接種もすでに推奨され、接種が進んでいます。世界では高リスク型である9つの型のHPV感染を抑える9価のHPVワクチンが標準となっているのです。

 日本はというと、2013年4月から2価と4価のHPV ワクチンの定期接種(小学校6年生から高校1年生相当の女子が該当)が開始されたものの、2カ月後には副反応の懸念から積極的な接種勧奨は中止。現在もHPV ワクチンの積極的勧奨中止の状態が続いているため、HPV ワクチンの接種率は激減しています。

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接種率は2002年度生まれは0.4%と激減