妻が求める「共感」の正体は?画像はイメージ(写真/PIXTA)
妻が求める「共感」の正体は?画像はイメージ(写真/PIXTA)

 なぜ夫婦は分かり合えないのか――これは結婚した男女の永遠のテーマであり、容易に解決できない“難問”だ。これをひも解くための実用書もベストセラーになっているが、それを実践して円満になったという夫婦もあまり聞かない。一体なぜなのか。『ぼくたちの離婚』の著書もあるライターの稲田豊史さんが寄稿した。

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 ここ数年で、「女は共感を求める生き物」という“常識”が、男たちの間でだいぶ知られるようになってきた。

 夕食の席についた途端、妻が職場やママ友の愚痴を夫に言ってくる。誰それという上司が私の提案を横取りする、誰それというママから高い平日ランチに誘われて困る、などなど。そんな不機嫌をぶつけられた夫が、一生懸命“解決法”を提案したり、訳知り顔で“問題の原因”を解説したりするのは間違いだ。妻の不機嫌は、より加速してしまう。

 正解は、「その上司、ひどいね」「うわあ、いやなママだね」という共感の言葉である。妻が求めているのはソリューション(解決)ではなく、シンパシー(共感)なのだから。黒川伊保子さんのベストセラー『妻のトリセツ』にも書かれている、「基本のき」だ。

 しかし、テクニック論としては理解できても、このことに心の底から腹落ちできている夫は、実は少ないのではないだろうか。ここで、少し意地悪に、夫たちの声を代弁してみよう。

「なんだってわざわざ、家の中で自分の不機嫌をぶちまけるんだ? オレは会社で嫌なことがあっても、ぐっとこらえて我慢してるのに。こっちだって仕事で疲れてるんだ。家にいるときくらい、ニコニコしててくれよ。だいたい、大人なんだから自分の機嫌くらい自分でとれないのかね?」

 なぜ妻は、夫に対して常に不機嫌なのか? その疑問を解く鍵を、私が話を聞いたある夫婦の衝突事例から探ってみよう。

 共働き夫婦のノブオとミチコ(ともに仮名)。2人は結婚するとき、「子供ができたら、ミチコが育休と産休を取る」と話しあって決めていた。もちろんノブオの押し付けではなく、ミチコも納得ずくだ。ところが、いざ妊娠すると、ミチコはノブオに当たりはじめた。

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夫にも「不自由さ」を味わってほしい