新国立競技場を管理する日本スポーツ振興センターは、「これは昨年末のオープニングイベントの場で、モットーとして使用したいわばキャッチコピー。国立競技場自体の固有名詞は、Japan national stadiumとしています」と説明する。一方で多賀氏は、競技場管理者から来訪者へのメッセージならば、「Welcome to our new stadium」という表現のほうがすっきりすると指摘する。

 帰国の途についたバッハ会長が内心、どう感じていたのか気になるところだ。

 東京五輪に限らず、政府のコピーの英語も同様に違和感のあるものだという。GO TO キャンペーンの「 Go to travel 」 、「 Go to eat」も珍妙な英語だと多賀氏は首をひねる。

 「行く」は「go」。「~に」 は「to」 と日本語とひとつひとつあてはめているが、「英語はそんな簡単な言葉ではありません。日本語の単語に一つ一つ対応する英単語などない」(多賀氏)。

 多賀氏によれば通常、「旅行する」は、 「travel」、「take a trip( journey)」、「 go on a trip」あたり。目的地を伝える場合は、「take a trip to Kyoto」のように、「to~(場所)」 をつける。「go to eat」も、「外食して下さい」と言いたいのなら「eat out」がスマートな英語表現だ。

 新型コロナウイルスの感染者が2、3日で倍増する「爆発的感染拡大」の意味で使っている「overshoot」は、独りよがりの誤用であるという。

「なぜなら英語の世界で『overshoot』は、弾丸が標的を外れて上に飛んでいくなど、『目標を外す』ことを指す。『爆発的感染拡大』の意味はありません」(多賀氏)

 実際、英語を使う在日外国人はコロナ禍で連呼された「overshoot」の意味を理解できず戸惑った、と英字紙『Japan Times』が記事にしている。

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菅首相と自民党議員、本当にレベルが低いのはどちらか