ホンダの現場責任者である田辺豊治F1テクニカルディレクターは「2021年のパワーユニットは弱点を強化しつつ、強みも伸ばすという形で開発をしています。これまで数年行ってきた年間アップデートを上回るレベルで、多くの箇所に手を入れ、パフォーマンスアップを実現する予定です」と打倒メルセデスを目標に掲げる。

 そのホンダとパートナーを組むレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表も、ホンダのF1参戦終了が決まったからといって、手を抜くつもりはない。

「残る2020年シーズンと2021年シーズンへ向けたわれわれのターゲットは変わらない。常に勝利を目指して戦い、チャンピオンシップに挑戦していく」

 F1はコロナ禍の影響で、2021年に導入される予定だった新しいレギュレーションが1年延期された。したがって、2021年もレギュレーションは基本的に今年と同じ。現在レースに使用しているマシンを今後、どのように開発していくかが、来シーズン戦うマシンの戦闘力に大きな影響を与えることになる。

 もし、レッドブル・ホンダが今シーズンの残りのレースでメルセデスに接近したり、勝利できれば、来シーズンは今年以上に、ホンダはタイトルをかけた戦いに期待が高まるだろう。つまり、今シーズンの残りの4戦は、来シーズンへ向けた試金石となる戦いとなる。

 ホンダは、パワーユニットを供給する2チームから、こう言われている。

「今シーズンの残りと来シーズンはいままで以上に勝ちにこだわって戦おう」

 F1参戦終了を発表したことによって、ホンダとそのパートナーの目標は明確となった。2020年の残りのレースは、2021年に向けた戦いのプロローグでもある。(文・尾張正博)