昨シーズンの就任から2年連続でチームをリーグ制覇に導いた原辰徳監督 (c)朝日新聞社
昨シーズンの就任から2年連続でチームをリーグ制覇に導いた原辰徳監督 (c)朝日新聞社

 2位以下に大差をつけてセ・リーグ連覇を達成した巨人。7月中旬に首位に浮上すると、その後は山場らしい山場もなく、まさに独走での優勝だった。しかし細かく数字を見ていくと手放しでは喜べない点もいくつか見えてくる。そんな巨人の不安要素と、それでも独走となった原因について探ってみたいと思う。

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 まず巨人最大の不安要素となるのが投手陣だ。チーム防御率3.34(以下、成績は全て11月4日終了時点)はリーグでもトップの数字だが、エースの菅野智之がこのオフにもメジャー移籍という報道が出ており、その穴をどう埋めるかということが最大の焦点になる。今年の菅野のここまでの成績は19試合に登板して14勝2敗、防御率2.04、1イニングあたりに許した走者の数を示すWHIPは0.91と先発投手としては非の打ち所がない成績となっている。

 菅野に続く投手としては高校卒2年目の戸郷翔征が8勝6敗、新外国人のサンチェスが8勝4敗と貯金を作っているものの、ともに今年が実質1年目のシーズンだけに来年も同じ成績が残せるかは未知数である。他の候補では田口麗斗、畠世周、桜井俊貴、メルセデス、今村信貴などの名前が挙がるが、シーズンを通して先発を任せるには心許ないのが現状である。

 10月26日に行われたドラフト会議では上位指名で二人の大学生投手を獲得したが、2位の山崎伊織(東海大)は6月にトミー・ジョン手術を受けて来年はリハビリのシーズンとなり、1位の平内龍太(亜細亜大)は故障明けでどちらかというとリリーフタイプであることを考えると、先発投手陣の上積みとしては計算できないだろう。新外国人やFAでの補強という手もあるが、菅野の穴を埋めるような投手を獲得できる可能性は低いだろう。まだ菅野の退団が決まったわけではないが、原辰徳監督には頭の痛い日々が続きそうだ。

 一方の野手陣も万全とは言い難い。今年のチーム得点数(511)はDeNAと並びリーグトップタイの数字となっているが、個人成績を見てみると、セ・リーグの打率トップ10に巨人の選手は一人もランクインしていない。打率3割を超える選手はゼロである。全体的に打率の高い選手が少ないシーズンとはいえ、ダントツで優勝するようなチームの打者が一人も打者成績上位に名を連ねていないというのは異例と言えるだろう。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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