主砲の岡本和真がホームラン、打点でリーグトップの成績を残しているのは心強い限りだが、中軸を構成する坂本勇人丸佳浩の二人はベテランと言える年齢に差し掛かっており、来年以降も安定した成績を残せるかは微妙なところだ。リードオフマンでは吉川尚輝、松原聖弥の二人がレギュラーに定着したのは大きいが、ともに大学卒ということで来年26歳と中堅に差し掛かっている。

 昨年高校卒1年目ながら二軍で首位打者を獲得した山下航汰も故障で今年は二軍でわずか4試合の出場にとどまっている。岡本以外の若手で中軸候補と言える選手は見当たらないのが現状である。坂本と丸が元気なうちに、世代交代の準備を進める必要がありそうだ。

 少なくない不安要素を抱えながら巨人が独走できたのは投手では菅野、野手では岡本、坂本、丸という柱がしっかりしており、若手とベテランを上手く回しながら積極的なトレードでチームを活性化させた賜物と言えるだろう。そして他の5球団を見ると投打の太い柱が揃っているチームはなく、補強に対しても出遅れたという印象が強い。どのチームも巨人に何としても対抗しようという姿勢が見えてこないのは寂しいところである。

 しかし前述したように巨人の不安要素は多く、来年以降もこの状態が続くとは考えづらい。以前と比べてFAで選手が獲得しづらくなっているだけに、重要なのは若手の輩出スピードを早めることである。ドラフトでは支配下と育成あわせて19人を指名し、11月2日には14人の選手に戦力外通告を行うなど思い切った選手の入れ替えを行ったが、それだけではもちろん不十分である。

 二軍、三軍をしっかり機能させて、獲得した選手の能力開花に努めることがこれまで以上に求められることになりそうだ。“育成の巨人”が復活して、新たな柱が確立されることに期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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