子に会えない母親は増えている。写真はイメージ(写真/PIXTA)
子に会えない母親は増えている。写真はイメージ(写真/PIXTA)
厚労省で開かれた「子どもに会えない母親」たちの記者会見の様子
厚労省で開かれた「子どもに会えない母親」たちの記者会見の様子

 ある女性は「離婚届に判を押すまで寝かせない」と毎晩離婚を強要され、子どもを奪われた。ある女性は、子どもに会えない中で『しね』『ババア』と書かれた紙と一緒に写った子どもたちの写真が送りつけられる――今、自分の子どもに会えず、悲嘆に暮れる母親が増えている。夫婦の離婚後、子どもの親権をどちらか一方のみが持つことになる日本の「単独親権制」。親権を確実に自分のものにするために、相手の非をあげつらって子どもに会えなくしたり、子どもにもう一方の親の悪口を吹き込み「会いたくない」と言わせたりする意図的な「引き離し」が横行している。こうした被害を訴えるのは、かつては男性が多かったが、実は母親も同じ目にあっていることがわかってきた。

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 9月16日、厚生労働省で、離婚や別居によって子どもに会えなくなった母親たちが記者会見を開いた。23人の母や祖母が集まり、その体験を語った。

 不貞を繰り返す夫の元を離れる決意をしてから、夫と義母によって3人の子どもと引き離されたという30代女性Uさん。別居の原因は夫の不貞行為だったにもかかわらず、子どもは夫と義母に奪われ、面会すら認められない。月に1度、写真だけは送ってもらう約束をしたが、自身が子どもたちに宛てた手紙を破っている写真や、「しね」「ババア」「バカ」などと書かれた紙を持っている写真、中指を立てたポーズをしている写真などが嫌がらせのように送られてくる。

 また、子どもに会えない祖母の立場で登壇したMさんは、娘が子どもの引き離しに遭い、孫と会うことができない。娘は出産後、精神的に不安定だという理由で実家に帰され、実子との面会も断られ続けた。2年後、最愛の娘は自殺した。

 実の子どもと引き離される女性たちに、まったく子どもに会えなくなるほどの、ましてや自殺に追い込まれなければならないほどの非があったのか。「子どもに会えなくなるなんて、あなたにも何か悪いところがあったのでしょう?」と周囲に言われ、「自分が悪いから子どもに会えないのか」と誰にも相談できずにひとりで苦しみ続ける当事者も多い。

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「子どもを置いて出て行った」となじる夫