■小田急は複々線完成で巻き返し

 利便性に差が出るのは、京王は京王線と相模原線が主軸に対し、小田急は小田原線と江ノ島線であることが大きい。

 小田急は小田原線の複々線完成に伴うダイヤ改正を2018年3月17日に行い、多摩線の改善に乗り出した。

 小田原線複々線完成前の多摩線は、新宿~唐木田を結ぶ列車が平日は各駅停車のみ下り4本、上り10本、土休の下りは各駅停車1本、上りは急行1本、各駅停車2本だった。それ以外の都心直通列車は、東京メトロ千代田線直通の多摩急行(朝と夕方以降に運転)および急行(日中のみ運転)である。急行の場合、新百合ヶ丘で快速急行に乗り換えることで小田急多摩センター~新宿は35分を要した。

 複々線の完成後は、平日朝ラッシュ時の唐木田・小田急多摩センター~新宿に通勤急行を設定し、小田急多摩センター~新宿を約40分で結んだ。急行より停車駅は少ないが、ラッシュ時は運転本数が多い関係で、複線区間は飛ばしづらい区間もあるため、所要時間は急行よりかかる。これは京王も同じことで、この時間帯の京王特急や準特急も京王多摩センター~新宿は約40分と同じである。しかし、小田急では小田急多摩センター始発をメインとすることで、“着席通勤”をアピールしたのだ。

 2020年現在、平日7時台の多摩センター始発の上り列車は、小田急の通勤急行4本に対し、京王は準特急と区間急行が各1本で、「ラッシュ時の新宿へは小田急が速くて快適」であることを沿線にアピールした格好だ。

 これが最混雑区間におけるラッシュ時の輸送人員に大きく表れた。

 複々線完成による列車の増発で、小田原線世田谷代田~下北沢の混雑率は191%から151%(輸送人員はいずれも74,554人)に緩和された。しかし、2018年度の混雑率と輸送人員は157%(75,842人)に増加し、混雑緩和により利用客が増加したのがわかる。

 同様に、多摩線五月台~新百合ヶ丘の混雑率と輸送人員も、複々線完成前の2017年度は86%だったが、複々線完成後は68%(いずれも9,593人)に緩和され、2018年度は72%(9,662人)に増加した。

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