「リモート離婚」したエステティシャンのA子さん(撮影/飯塚大和)
「リモート離婚」したエステティシャンのA子さん(撮影/飯塚大和)

 新型コロナウイルスの蔓延は、人と人との関係性も大きく変えた。恋愛においてもリモートが活用され、一度も会わずに入籍するカップルも誕生した。だが、結婚後に一度も会うことなく「リモート離婚」に至ったケースはまれだろう。当事者にその特異な“結婚生活”を聞いた。

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「楽しみだな」

 今年1月、東京都に住むエステティシャンのA子さん(34)は弾む気持ちを胸に、イタリア行きの航空券を購入していた。

 A子さんには婚約者がいた。相手は9歳下のイタリア人の男性だ。彼とは4年前、ワーキングホリデーでオーストラリアに滞在していた時に出会った。当時、英語がほとんど話せなかったA子さんにも、彼は優しく接してくれた。そんな優しさとイタリア仕込みの楽観的な性格にひかれ、ほどなく交際が始まった。

 2人で日本に住むようになり、彼は1年半、日本語の専門学校で学んだ。イタリアの創作料理店で培ったスキルを活かし、将来は日本のホテルのレストランで働くことを目指していたという。学生ビザの期限が切れようとしていた昨年9月、2人で今後のことを話し合い、自然と「結婚」の話に行きついた。

「配偶者ビザが取れれば、彼の在留期間にとらわれず、ずっと2人で一緒に過ごすことができる。この時は希望しかありませんでした」(A子さん)

 配偶者ビザは、申請から許可が下りるまでに平均で数カ月がかかる。その間に学生ビザで滞在できる期限を超えてしまうため、9月に彼はイタリアに一時帰国し、アルバイトで新生活に向けた資金をためながら、ビザに必要な書類の準備を進めることにした。入籍の時期は、半年後の4月ということで話が一致した。

 2人は遠距離の間も、こまめに連絡を取り合った。予定通り、4月の入籍に向けて出生証明などの書類を郵送してもらった。

「年明けにはイタリア行きの航空券とガイドブックを買って、彼の両親へあいさつに行く際のプランも立てていました」(A子さん)

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入籍してすぐに「緊急事態宣言」が発令