歯周病は糖尿病、心筋梗塞、認知症など、全身の健康とも大きくかかわっていることが分かってきています。そのキーワードは歯周病による「慢性炎症」と考えられています。日本歯周病学会・日本臨床歯周病学会による公式本『続・日本人はこうして歯を失っていく』では、歯周病が全身の健康に悪影響に及ぼすメカニズムを解説しています。ここでは「糖尿病」「関節リウマチ」を抜粋して届けします。
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糖尿病は歯周病との関連について最も研究が進んでいる病気の一つです。糖尿病があると歯周病が進行し、歯周病があると糖尿病が悪化するというように双方向に影響します。このため、歯周病は網膜症や腎臓病、神経障害などの合併症とともに、糖尿病の6番目の合併症とされています。医師が参照する診療ガイドラインをはじめ、患者さんが使用する「糖尿病連携手帳」にもしっかりこのことが明記されています。
糖尿病があると歯周病が悪化する原因の一つは、肥満など、メタボリックシンドロームの人の脂肪組織から多く分泌される「アディポカイン」という生理活性物質です。このアディポカインの産生が亢進すると、さらに他の炎症性サイトカインという炎症を亢進させる物質が放出され、これが全身を軽い炎症状態に至らせるとともに、歯周組織の炎症も悪化させます。
こうして炎症が悪化し、重症化した歯周病がさらに炎症反応を引き起こし、血糖の代謝に悪影響を及ぼし、糖尿病を悪化させるのです。
また、肥満度はそれほど高くなくても重度の歯周病を持っている人は、からだの炎症反応が高く、炎症性サイトカインが肝臓などの臓器や筋肉などがインスリンを使っておこなう糖の代謝を妨げ、インスリン抵抗性の状態を作り出していることも示唆されています。
大事なことは、歯周病を治すことが血糖値の改善に役立つという点です。日本人の糖尿病患者を対象とした研究では重症の歯周病を持つ糖尿病患者に歯周病の治療をした結果、血糖値の指標であるHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)が統計的有意に約0・4%改善したという結果が得られています。