――亡くなった木村花さんも、生前はSNSでの“攻撃”を受けていたそうです。

 周囲がなんとか彼女をフォローできていたらと思います。SNSでの誹謗中傷を苦に命を絶ってしまう若者は後を絶ちません。木村さんは芸能人のため大きく報道されましたが、ネット上の被害を苦に亡くなっていく人はたくさんいるのです。今回、木村さんの件をメディアが取り上げたことで、国民の意識が高まりましたが、これを一時的なものにしてほしくないと思います。

――協議会にも、自殺を考えるほどまでに深刻な相談は寄せられていますか?

「死にたいと思うことがある」といった相談が数百件ほど寄せられています。同様の相談はコロナ禍で増加傾向にあり、外出自粛によってインターネットを閲覧する時間が増えたことが要因の一つだと思います。いじめは特に増えています。画面上の文字の強さ、繰り返す言葉などの積み重ねが恐怖感や絶望感につながるのです。

 また、職場の同僚から事実と異なることをネット上で書かれてしまい、精神的に追い詰められてしまうケースも多くみられます。「仕事上のミス」や、「上司に媚びを売っている」「他の人の企画を盗んでいる」といった、仕事上の評価が下がるような嘘を書き込まれてしまうのです。相談者の話に耳をかたむけ、被害やその人の生活環境などを聞いたうえで、ケースごとに適切なアドバイスや、心が楽になるような声かけをするようにしています。ストーカーなど事件性がある相談の場合には警察と連携して対応しています。

――誹謗中傷をなくすためにはどうすればよいのでしょうか。

 悪意ある書き込みをする人への罰則が必要だと思います。「匿名での投稿を禁止に」という意見もありますが、実名でも悪意ある投稿をする人はいます。彼らは、身元を特定されたところで問題ないと考えているのです。厳罰化を定めて初めて「実名投稿」にも抑止効果が生まれると思います。

 現状の法律では誰もが何でも自由に書き込めてしまううえに、削除を要請しても、必要な手続きが多く、時間がかかり、被害者側の負担が大きすぎます。手続きの簡略化と、SNSなどの運営側の柔軟な対応も求められています。

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デマ情報がいつしか多数意見に…