短期の留学に学生にも、そこまでシビアな現実は語りませんが、最低限、自分の身を守れるようには教えています。昨年は反日運動が盛り上がっている中で、保護者の心配もありましたから。

――若者の間で韓国カルチャーがブームの一方で、今は「嫌韓」も目立つ。この相反する現象をどのようにみていますか。

水野:残念ながら、K-POPファンは「韓国」には興味がないという人がほとんどです。わかりやすく言えば、コスメ、グルメ、イケメン三つの「メ」以外には興味がないのです。韓国の文化や歴史、政治に関心を寄せる人がどれだけいるでしょうか。完全に趣味の領域なのです。

 もちろん、個人の好みを否定するつもりはありません。確かにBTSなどは世界的なアイドルで非常に洗練されています。日本にはそうしたカルチャーがない。だから惹かれるんですね。実力があるので、日本で人気が出るのも当然です。

 しかしながら、「嫌韓」とK-POPファンはお互いの関心事が異なるので、交わることはありません。「嫌韓」は、結果を出しているKPOPの実力も否定したがりますが。とはいえ、特にネット上では、両者はきれいに住み分けができておしまい、それが現実なのだと思います。

――今は、第3次韓流ブームと言われています。最初の韓流ブームといえば、「冬のソナタ」までさかのぼります。当時は友好ムードが醸成されたように思います。日韓関係が悪化する中で、文化の交流に期待を寄せる論調も根強くあります。

水野:かつてのヨン様ブームが、日韓関係に何か影響を与えたでしょうか。芸能活動は「商売」であって、ボランティアではないのです。日韓関係で抱える問題と、カルチャーは次元が違う話なのです。文化と政治が完全に分かれているからこそ、K-POPが流行しているとも言えますね。

 草の根の文化交流でしたら、私自身もずっと続けてきました。妻は韓国人です。韓国には知り合いもたくさんいて、ずいぶんとお世話になりました。日本の大学卒業後に渡韓し、韓国の大学院に進み、16年も現地で暮らしたのです。

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ブームの中で誰も見つめてこなかった