橋本容疑者の逮捕が報道された4月24日以降も、キッズラインは新たな情報は公開していない。

 なお、同社以外の2社はホームページで事件とは一切関係がない旨を記載し、「今後も皆さまに安心してサービスをご利用いただけるよう、尽力してまいります」などのメッセージを公開している。

 なぜ事件は起こってしまったのか。キッズラインに登録しているベビーシッターが次のように打ち明ける。

「キッズラインは登録するのが非常に簡単なんです。2、3時間の登録説明会と面談を行った後、2時間くらいの実地研修を行うだけ。保育士の資格を持っていれば審査に落ちることまずないと言われています」

 キッズラインは16年10月、小池都知事が「希望の塾」を開塾した際、託児スペース「きぼうのほいくじょ」の運営を託されるなど、小池都政と共に急成長を遂げてきた。需要増に応える人材確保を急いだ結果、橋本容疑者のような人物が紛れ込んでしまったのだろうか。 

 ある捜査関係者が明かす。

「実は、橋本の携帯電話の中には複数の男児の裸の写真が見つかっており、警視庁管内でも数件の余罪が確認されている。橋本は80回以上、シッターとして稼働しているといい、キッズラインの利用者の中に、さらなる被害者がいる可能性を視野に捜査を進めています」

 はたして、同社は今回の事件に対し、どう答えるのか。

 本サイトは、メールで「容疑者が逮捕されたことの見解」と「昨年11月時点で否定していた容疑者の犯行をいつの時点で認識したのか」「再発防止について対応策を講じるつもりはあるか」について質問したが、期日までに回答はなかった。

 メール送付後に電話でも担当者に取り次いでもらうように要請したが、オペレーターは「社員の連絡先は教えられない」「社員への連絡はいたしかねる」とのことで、回答は得られなかった。

 なお、橋本容疑者は男児に対して逮捕容疑よりも悪質な行為をした疑いもあるが、証拠不十分で強制わいせつ罪にとどまったという経緯もある。

 ネットを介したベビーシッターのマッチングは、14年には殺人事件も発生している。キッズラインは事業者として、対応策も含めた説明を果たす責任があるのではないだろうか。(橋本浩史/AERAdot.取材班)

【2020年6月8日追記】
キッズラインは採用にあたっての同社の審査の実態について「独自の登録基準に基づいた選考を実施し、2019年12月現在において合格率は35%(なお、書類エントリーからも含めると、合格率は14%)と厳格な審査を実施している」と説明している。
(参照 https://kidsline.me/about/safety

【訂正】
配信当初の原稿に表現が不適切な箇所があったため、以下のとおり訂正します。

誤:橋本容疑者には複数の前科があり、今年の1月8日には別件の強制性交等の疑いで神奈川県警に逮捕されています。

正:橋本容疑者には複数の逮捕歴があり、今年の1月8日には別件の強制性交等の疑いで神奈川県警に逮捕されています。