長年、芸能界の話題となっていた自らの結婚をそこで発表すれば、当然世間の目が集まる。同時に、発表の場となったゼロテレビにも大きな注目が集まる。

■危機管理を超えた「本気」

「めちゃユル」に矢部が登場したのは3月27日午後11時ごろ。婚姻届を提出したのが同午後10時ごろ。夫婦になって1時間ほどで番組に出演している形だ。夫婦になりたてホヤホヤの状態、最も“旬”の状態で出ることがより一層、番組の値打ちを高めることにもなる。あらゆるところに「少しでもプロデューサーのためになれば」という恩返しの強い気持ちが表れていた。

 大切な人に何かあった時には、自分にできる一番のことを考え、それを実行する。一方、存在が大きくなればなるほど、あらゆる摩擦も生まれ動きづらくなる。今回、再びそれをやりきった矢部の姿勢からは危機管理を超えた本気がにじみ出ていた。

 20年以上、お笑いを間近で取材してきて、断言できることが一つある。

“いい人が売れる”

 売れるということは「またこの人と仕事がしたい。次も呼ぼう」がずっと続く状態のことを指す。面白いことはプロとして当たり前。それがなければ、プロ以前の問題。

 プロの中から、使いたいプロを選ぶ。これを選ぶのが人間である以上、芸人にとって、人間性というパラメーターは重要なポイントであり続ける。

 今年1月30日、お笑いコンビ「ロンドンブーツ1号2号」の田村亮が仕事復帰を果たした相方・田村淳とのトークイベント。それを見た時にも思い起こされた故・桂米朝さんが弟子たちに話していた言葉が、今回も繰り返し頭で響いた。

「面白い芸人にならんでもエエ。いい人間になりなさい」
                           (中西正男)

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中西正男

中西正男

芸能記者。1974年、大阪府生まれ。立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当として、故桂米朝さんのインタビューなどお笑いを中心に取材にあたる。取材を通じて若手からベテランまで広く芸人との付き合いがある。2012年に同社を退社し、井上公造氏の事務所「KOZOクリエイターズ」に所属。「上沼・高田のクギズケ!」「す・またん!」(読売テレビ)、「キャッチ!」(中京テレビ)、「旬感LIVE とれたてっ!」(関西テレビ)、「松井愛のすこ~し愛して♡」(MBSラジオ)、「ウラのウラまで浦川です」(ABCラジオ)などに出演中。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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