“感覚”を取り戻すためには、各球団の練習に参加し、ブルペンで何百球、何千球といったボールを毎日見て、目を慣らしていく作業が必要です。もちろん、それだけでなく、練習試合などで実際のプレーを見て、ジャッジする訓練もしなくてはいけません。

 日数にすると最低1カ月、練習試合などは20試合程度こなさないと厳しいでしょう。

――試合数削減などで、給料などへの影響はあるのでしょうか?

 審判の給料は年俸制です。いまのところ年俸額が減額されるといった話はないようです。ただ、試合数削減は決定的なので、1試合ごとにもらえる「出場手当」は当然少なくなります。

「出場手当」の配分は、球審3万4000円、塁審2万4000円、控え審判7000円です。ベテランの審判であれば「出場手当」だけで、年間200万~300万円にもなります。もし、プロ野球そのものが中止ということにでもなれば、審判にとっては大打撃です。

 若手審判への影響も深刻ですね。彼らの給料はまだ決して高くはありません。昇給のために、一日も早くトップレベルの技術を習得しようと日々頑張っていたはずです。

 しかし、試合数が減れば、それだけチャンスも減ってしまいます。伸び盛りの1年を棒にふることは、ここまで培った経験がゼロになってしまうといっても言いすぎでないでしょう。

「辞める」という選択をする審判がいても何も不思議ではありません。来年のことは、誰にもまだわからないのですから。

――プロ野球界にとって、今年は大きな変化が求められるのでは?

 2019年のプロ野球の観客動員数は過去最高の2653万人に達しました。ただ、今年、もし仮にプロ野球が開幕したとしても、昨年のような満員の観客が集まるかといったら、それは難しいでしょう。

 ドーム球場は、まさに「密閉」「密集」「密接」の3密です。ソーシャルディスタンスのことを考えると、おそらく4席に1人程度しか観客を入れることはできないでしょう。つまり、観客が5万人収容できる球場であっても、1万~2万人程度にまで落ち込むことは覚悟しなければなりません。

次のページ
このまま開幕が遅れると球界再編の可能性も