こうした客たちの主張を専門家はどうみるのか。公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」の田中紀子代表は「この非常時にパチンコに行く人は、まず依存症もしくは依存症予備軍でしょう」と断言する。もはや理性で行動が制御できていないからだという。

「理性を働かせれば、ウイルスをうつすこともうつされることも、クラスターが発生し得ることもわかるはず。頭ではわかっていても、自分の意志で自制ができないのです。さまざま言い訳を並べるのも、依存症者の特徴です。良くないことだと頭のどこかではわかっているが、自制が利かないので、それに対する言い訳を考えつくという思考パターンになります」

 一般的に『否認の病』と言われるように、自分を依存症だと認めないのが、依存症者の特徴だという。今のような状況下では、この思考パターンは悪いほうに作用してしまうことから、平時よりも業界は強い危機感を持つべきだと指摘する。

「依存症を生み出してきた産業の責任として、業界側がきちんと自粛に応じるべきです。パチンコ客の50%超が喫煙者という調査結果も出ています。4月1日からはフロアが禁煙となり、かえって狭い喫煙ブースに人が集まっています。年配者も多い。ハイリスク層を抱えているのだから、業界が自粛するのは当然です」

 そして、このまま営業を続けるパチンコ店と客を放置すれば、「コロナ以前」よりも状況が悪化しかねないと警鐘を鳴らす。

阪神や東北の大震災後に、依存症者が増えたという調査結果があります。不安感の強い時代になると、アルコールや薬物、ギャンブルで気を紛らわせようとする人が増え、それが依存症の入り口になってしまう。今がまさにその時なのです」

 この状況でパチンコに通う客にも「言い分」はあろう。だが、パチンコに行くのを正当化しようとする行為そのものが、ギャンブル依存症の兆候だという事実は忘れてはならない。(AERA dot.編集部・飯塚大和)