巨人の宮崎キャンプを視察後、2月5日にDeNAのキャンプ地・宜野湾に姿を見せた松井氏は、前年22本塁打を記録した若き主砲・筒香嘉智(当時23歳)に「(逆方向の)左翼方向から打つのはいいこと」とアドバイスし、「スイングの力強さ、球をとらえる形は、去年好成績を残したのが納得できるバッティングだった。(自分と)同じ年齢のころと比べると、彼のほうが柔らかい」と絶賛した。

 わずか3日間の指導だったが、「本調子ではないときは、打てなくてもいい。でも、ボール球を打ってはいけない。フォアボールを狙いにいくのもひとつの手だ」という松井氏の教えを実践した筒香はこの年、不動の4番に成長し、24本塁打を記録。16年には44本塁打で初の本塁打王に輝くなど、球界を代表する長距離砲になったのは、ご存じのとおりだ。

 翌16年、松井氏は2年ぶりに巨人の臨時コーチを務める。高橋由伸新監督の下、次代を担う若手の育成にひと役買う形で、キャンプ初日の2月1日から2週間にわたり、熱血指導を行った。

 そんななか、松井氏が「目立った選手」として、ルーキーの重信慎之介とともに名を挙げたのが、2年目の岡本和真だった。

 マンツーマンの指導で下半身の使い方を教え、紅白戦で3打数無安打に終わっても、「内容は悪くないと思いましたよ」とフォロー。「今の彼をそんな細かく何かされる必要はない気がしました。何だろう。言葉で説明できる論理的なものじゃなくて、試合で見たいと思わせてくれる選手ですね」と評していた。

 その後、岡本は2年間1軍で結果を出せなかったが、18年、3度目の臨時コーチを引き受けた松井氏から「結果が出ないから、またすぐ変えたりするんじゃなくてね。彼の中で信じることがあるなら、それをやりつづけてほしい」と助言され、迷いを断ちきる。同年は打率3割9厘、33本塁打、100打点と大ブレーク。満22歳での100打点達成は、松井氏の満23歳を更新するプロ野球最年少記録でもあった。

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メジャーで指導した選手ものちにブレーク