「ロシアはまだまだ大酒飲みの国ではないか」

 つい呟いてしまった。ビール1.5リットルのペットボトルが売られている国を、僕はロシア以外に知らない。

 ソ連崩壊後の不安のなかで、アルコール依存者が急増した。国連の報告では、1992年から2001年にかけ、通常に比べ、年間250万人から300万人ほど多い人が死亡している。アルコールが原因の男性の割合が多かったという。戦争、飢餓、伝染病以外の理由で、これだけの人が死亡した例はないと報告は結んでいる。

 どうしてそこまで飲むのか。

 その後、提唱されたのが、「ウォッカをやめてビールを飲もう」キャンペーン。1.5リットルビールもそのときに生まれたという。

 当時、ロシアの法律では、ビールは酒ではなく、食品だった。ビールが酒になったのは2011年のことだ。

 マイナス12度の雪の道を、重い黒いビニール袋を提げて宿に戻った。

 アルコール摂取量が40パーセント減ったというのは本当だろうか。

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下川裕治

下川裕治

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(隔週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(隔週)、「タビノート」(毎月)など

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