石井:確かに。変な言い方ですね。

鏡:雨女と一緒。天気の子なんです。雨は雨女が降らしているわけじゃないんですよ。その人がいると雨が降る、と言うだけ。主客は存在しません。

石井:思想史家の丸山眞男さんの説で、日本の創世記的な神話「古事記」の世界は、「つくる」でも「うむ」でもなく「なる」で語られる、という話があります。神様が世界を主体的に「つくる」「うむ」のではなく、自然に「なる」のです。そこにも、主体と客体の分離はありません。占いの場では「なる」がよく出てきますね。「これからどうなりますか」とか、「来年はいい年になりますよ」っていう言い方をします。

鏡:そうだ、ハッピーもそうですよ。語源はHapで、辞書によるとラッキーという言葉と同じ意味があります。で、このHapから派生した言葉にHappenやHappyがある。Happenは出来事が起こること。ハプニングというのもこの言葉からきていますね。ということは、幸せも起こること、自ずとなることだ、という解釈ができます。

石井:先ほど、私たちは何でも選択しなければいけない、と言いましたが。でも、自ずとそうなる瞬間はありますよね。例えば、会社を辞めると決断した人が「なんか今だって気がした」と言う場合。私たちは、自分で物事を決めているって思い込んでいるところもありそうです。

鏡:ただ、占いは方程式ではないので、こうなったらこうなるって決めつけない方がいいですね。想定外の変化が起こり得るもので、それを純粋に喜べるか。占いは当たりますが、どう当たるかは誰にも分からない。だから一生楽しめます。

石井:人生を何回も振り返って解釈し直す、という楽しみもありますね。そこで占いが役に立つことも。

鏡:来年に起こる、大変革も楽しみですよ。この先は我々にとっても全くの未知の世界。どうなっていくのかは誰にもわかりません。何が起こるのか、ワクワクドキドキ待ちましょう。

【鏡リュウジ】
心理占星術研究家、翻訳家。京都文教大学客員教授。心理学をベースに、占星術をわかりやすく解説。「完全版 タロット辞典」(朝日新聞出版)を監修するなど著書、監修、翻訳多数。https://ryuji.tv/

【石井ゆかり】
ライター。星占いの記事やエッセイなどを執筆。Webでは本人サイトのほか、Twitterやブログ、noteでコラムも連載中。近著は「月で読むあしたの星占い」(すみれ書房)。http://st.sakura.ne.jp/-iyukari/

※『AERA占いMOOK 占いで閉塞感を打ち破る あなたの運命2020』より一部抜粋