守備の柱が捕手であるのは言うまでもない。森のミスが勝敗に結びついたのは必然であった。しかしディフェンスに関してはチーム全体に言える。

「守備に関してはチーム全体が弱い。防御率、失点など投手陣を含めたすべて。野手の中では強いて言えば、ショートとレフトだけはしっかり守れていた。サードも中村剛也はよくやっていたけど、やはり年齢的なものもあるから……。GMが言うのもなんだけど、うちの守備力でよく勝てたかなと(苦笑)。野球は失点を防げれば勝利も近づく。でもうちの場合は逆の野球をやっているよね」

 野球はディフェンスから、は野球のセオリーである。しかしながら現在の埼玉西武は、逆行したような野球をやっているようにも見える。「山賊打線」と形容される強力打線で相手をひれ伏せさせるように打ち勝つ野球だ。

「GMとして最初に考えるのは、ペナントレースを勝つこと。そのことに関して悲観することはない。うちの野球でシーズンの長丁場を勝ったことは誇りに思う。見ている人たちも、うちの野球はおもしろいと思うよ」

 何をやっても勝てば良い、という考え方をする人もいる。しかし渡辺GMはそうではないようだ。それは現役時代からの日本シリーズに対する考え方や挑み方からもわかる。

「現役の時は日本シリーズはおまけという考えだった。とにかくシーズンで結果を残す。だからプレッシャーも感じないし結果も出せたんじゃないかな。日本シリーズで通算7勝したけど、開幕戦や天王山の試合の時の方が緊張した。日本シリーズは勝った後の、ショーとまでは言わないけど、感覚的には『勝とうが負けようが……』という感じだった。日本一になってこそ、と思っていた人もいたかもしれない。そういう人からすれば、納得が行かない考えかもしれないけどね……」

 監督通算6年で438勝を挙げAクラス5度、そのうちリーグ優勝1回、日本一1回。監督退任後は、シニアディレクター、編成部長をつとめ19年からはGMへ。その間も6年でAクラス3度、そのうち優勝2回。監督、フロントと結果を残しているが……。

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選手時代とは少し異なる複雑な気持ち